3.固定金利と変動金利の違い
「住宅ローンで多くの人が頭を悩ませる問題のひとつは、『固定金利』にすべきか、『変動金利』にすべきかでしょう」(八ツ井氏)というように、「固定か、変動か」についてもよく議論になる。
固定金利は借り入れ期間中(あるいは所定の一定期間中)、適用される「金利」が変わらないことが特徴だ。たとえば全期間適用の固定金利1%でローンを組めば、仮に激しいインフレが起こって、金利が3%に上がっても5%に上がっても、住宅ローンに適用される金利は1%のままだ。一方、変動金利は、銀行が企業向け短期融資の際に使う金利、短期プライムレートをベースに決められている。
単純に、金利水準を比較すれば、「固定金利」のほうが「変動金利」よりも高い。だからといって「変動金利」のほうがベターとは限らない。大きく異なるのは将来の金利上昇リスクだ。金融機関は、将来の金利上昇リスクを取って固定にしている。だから、変動金利よりも高く設定されるわけだ。
実際は、住宅ローンのような長期の固定金利ローンの場合、償還期間が長い債券市場の金利をベースに利回りが設定されている。なかでも、取引量・発行量、ともに圧倒的に多い「新発10年物国債」の利回りが基準になっている。
マイナス金利政策で住宅ローンは空前の低金利
日銀では「マイナス金利政策」など、大規模な金融緩和を実施している。現在、短期金利はマイナス、長期金利の基準となる新発10年物国債についても年利0.05%と、ほぼ0近辺で推移している。そのため、変動金利も固定金利も大きな差がない状況。まだまだ変動金利を選択する人が多数派だが、将来の金利上昇に備え、固定金利を選択する人が増えている。
固定金利の場合は、「全期間固定金利型」と「固定金利期間選択型」がある。全期間固定金利は、借り入れをしている期間中はずっと同じ金利が適用されるが、固定金利期間選択型は、選択した期間のみ固定金利となり、それ以降は原則変動金利が適用される(その時点の金利で固定金利を選択することも可能)。固定金利選択型は固定金利期間が2~10年程度(期間が20年以上のものもある)と比較的短く、金利も全期間固定金利型よりも金利は低く設定されている。また、固定金利期間が短いほうが金利も低い。
変動金利の場合、4月と10月に年2回金利の見直しがあるのが一般的。市場の金利(短期金利)が低くなれば、それに連動して低くなる。金利が下がっていく局面では、適用金利が変わる変動金利が有利だ。しかし、金利が高くなっていく局面であれば、連動して利払いも増えていく。結果的にローン開始当初の固定金利よりも金利負担が上回ってしまうケースも起こりうる。
もっとも、急激な金利上昇に合わせて返済額を引き上げれば、払えなくなる人が続出するかもしれない。そこで激変緩和措置として、月の返済額は5年間変わらないという「5年ルール」と、5年後に返済額を改定する際に前回の支払額から25%以上は引き上げないという「125%ルール」が設けられている。ただ、金利が上がっていれば、利子の額も増えていくので、トータルの支払額は増えることになる。
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