東京の「独身が住む区」は男女でこんなに違う 江戸川・葛飾・足立区は断トツで「男余り区」だ

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住居は必ずしも賃貸とは限らず、持家である場合もあります。同じ2013年「住宅・土地統計調査」から単身世帯の男女別各年代別の持家比率を見てみると、30代までは単身男性の方が持家比率は高いのですが、40代前半で男女の比率が同じになり、40代後半では単身男性25%に対して、単身女性32%と逆転します。それ以降の年代は単身女性の方が常に持家比率が高いままで推移します。

私は、かつて結婚する意思の低いソロ女にインタビューした時がありました。その定性調査でも「40代になって結婚を断念した未婚の一人暮らしのソロ女は、家を買いがち」という傾向が顕著だったことを思い出します。

低収入の男性と高収入の女性が生涯未婚に陥りやすいという現実は、以前『女性が直面する「稼ぐほど結婚できない」現実』という記事でも書きました。一人暮らしの未婚女性が増えているということは、それだけキャリア志向で経済的に自立している未婚女性が増えているという証拠でもあり、この層は「自分より収入の低い男性と結婚するくらいなら、一生未婚でいい」と考える傾向もあります。

だからこそ、自分のソロ活動人生を謳歌するために、住みたいエリアに住む。場合によっては、ローンを組んでマンションなどを積極的に購入する。そのために20代のうちから貯蓄に励むソロ女も多いことでしょう。

未婚単身男女に広がる格差

一方で、40歳になっても非正規雇用などで低収入の男性は、持家購入など夢のまた夢です。自分の収入の範囲内で住めるエリアを探せば、必然的に家賃の低い下町エリアしか選択肢が残されていません。家賃・水道光熱費と食費を合わせたら可処分所得のほとんどを使い果たし、貯蓄するゆとりすらないという状態なのです。

40代未婚の一人暮らしという同じ境遇であっても、内実は両極端の格差が開いていると言えますし、高収入・アップタウン在住のソロ女と低収入・ダウンタウン在住のソロ男というふたつの層は、マッチングすることもないどころか、出会うことすらあり得ないわけです。職場も遊ぶ場所さえ違うわけですから。

東京23区の未婚一人暮らし男女それぞれの住む場所の違いから見えてくるのは、可視化されない「身分・階級の違い」なんではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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