「A4紙1枚ルール」が、逆に生産性を低くする 「緩和ルール」で部下の行動力を引きだすコツ

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時田さんの部下も、たしかにA4紙1枚では収まりそうにない内容を、無理やり収めようと努力しているのです。でも、そんなことに時間を使うぐらいなら、2枚になってもいいから、さっさと作ってしまうほうがよっぽどましです。

「束縛ルール」より「緩和ルール」が大切

効率化や生産性向上、円滑な仕事の推進のためのルールの存在自体が悪いわけではありません。社員の行動を制限しようとする使い方に問題があるのです。

そこで、「○○を禁止する」といった「束縛ルール」ではなく、「○○してもよい」という「緩和ルール」の形でルールを定めるとよいでしょう。趣旨に則った最適な行動を一人ひとりが選択することができるようにするのです。

時田さんは、「社内会議用資料は、本質を端的に伝えるものであること」という趣旨を再度部員に徹底したうえで、「原則A4紙1枚だが、必要性があれば2枚以上でもよい」とルールを変更しました。「原則1枚」で、内容を的確に要約することへの努力を促しながらも、形式的な帳尻合わせのために不毛な努力や時間を費やす必要はないということです。

東さんの場合も、「資料は手書きとする」という紋切り型のルールではなく、「社内資料の作成に体裁調整などの無駄な時間を費やす必要はない。そのために、手書きの資料でもよいこととする」とすればよいのです。

「緩和ルール」の重要なポイントは、ルールの形をとってはいても、趣旨に則ったものであることを条件として、メンバーに行動の裁量を保障している点です。趣旨に則ってA4紙1枚にまとめる努力はするが、どうしても2枚にならざるをえないときはそうすることが可能である。スピードを優先するという趣旨を理解したうえで、手書きであれPCであれ、自分にとって速いほうを選択できるということです。

もし趣旨を理解せずに無駄なことをしているメンバーがいれば、個別に改善を促していけばよいだけの話です。そのようなやり取りを通じて、一人ひとりが趣旨の理解に努め、自分の行動を考えるようになっていきます。

チームマネジメントの原則は、自分の思い込みでメンバーを無理やりコントロールしようとするのではなく、ゴールへ向けて一人ひとりが自ら考え行動できるような環境を整えていくことです。人の行動を制限しようとする細かいルールに価値があるのではなく、その趣旨を理解して、最適なやり方を自ら考えて行動するメンバーに価値があるのです。

櫻田 毅 人材活性ビジネスコーチ

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さくらだ たけし / Takeshi Sakurada

アークス&コーチング代表。九州大学大学院工学研究科修了後、三井造船で深海調査船の開発に従事。日興證券(当時)での投資開発課長、投資技術研究室長などを経て、米系資産運用会社ラッセル・インベストメントで資産運用コンサルティング部長。その後、執行役COO(最高執行責任者)として米国人CEO(最高経営責任者)と共に経営に携わる。2010年に独立後、研修や講演などを通じて年間約1500人のビジネスパーソンの成長支援に関わる。近著に『管理職1年目の教科書』(東洋経済新報社)がある。

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