沖縄一極集中?春季キャンプから見える野球 2018年の12球団のキャンプ動向を探る<下>

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宮崎、沖縄、高知のキャンプをめぐって、しみじみ思ったのは、プロ野球キャンプのぜいたくさだ。

筆者は数年前からキャンプ地を回っている。キャンプガイド本を作るにあたって、ストックの写真が使えるかと思ったが、ほとんど使えなかった。ユニフォームやフラッグ、看板などが毎年新しくなるからだ。「この写真のスタジャンの袖のラインは3本線ですが、これは2年前です。今は4本線になっています」みたいな指摘を球団からいくつも受けた。毎年、多くのアイテムを作り替えているのだ。

また、自治体の熱烈歓迎ぶりもすごい。ある市の職員に取材アポを取っていて「雨が降ってきたのでグラウンドにシートをかけないといけないので会えません」とメールをもらったことがあった。市や観光協会のキャンプ担当職員は、この時期、キャンプに張り付いている。キャンプで一番忙しいのは間違いなくこの人たちだ。

キャンプで配布するパンフレットを自治体の費用で印刷している例もある。筆者はプロ野球キャンプに隣接するJリーグのキャンプもできるだけ見に行くようにしているが、施設の豪華さと地域の熱意では、Jリーグはプロ野球に及ばない。

「野球離れ」への危惧をテーマとして書いている筆者としては、この光景は誠に心強い。「まだまだ捨てたものではない」と思う。

キャンプの経営資源を活用しているとは言えない球団

とはいえ各球団がこうしたキャンプの有形無形の経営資源をビジネスや顧客拡大に有効に使っているとはとても思えない。
キャンプへの来場が原則無料なのは、それでいいと思うが、今のファンは勝手にキャンプにやってきて、勝手にモノを買って帰っているだけだ。

例えば回るコースを提案し、見どころやイベント、プレゼント、グルメなどを盛り込めば立派な旅行商品になると思う。ソフトバンクや巨人は少し実施しているが、他球団はほとんどそれができていない。

小規模なツアーはあるにはある。今年のロッテがキャンプを張っていた石垣市のアジアゲートウェイ交流戦Power Seriesには、JTBが千葉県出発のツアーを組んでいた。昨年までは日本ハムキャンプにもツアー客は来ていた。しかしそれはまだ例外的だ。航空会社やLCC(格安航空会社)、地元ホテル、レンタカー会社、観光地などとタイアップした商品はほとんどない。

その最大のネックになっているのが、キャンプ日程が直前まで公表されないことだ。ほとんどの球団は前年の12月になって2月のキャンプ予定を発表する。中には1月になって休日を変更した球団もあった。これでは本格的な旅行商品は作れない。

もちろん球団にしてみれば、キャンプの目的はあくまで「チーム作り」であって、観客動員ではないということになろうが、シーズン中、主催試合であれほどきめ細かいマーケティングを行っている手法を、なぜキャンプでも活用しないのだろうか。

選手たちの練習環境を損なわず、顧客に満足を与えるサービスを提供することは、今のNPB営業部隊のオペレーションの高さを考えれば決して不可能ではないと思う。

楽天は本拠地、楽天生命パーク宮城(今年から改称)の「ボールパーク化」を推進している。楽天野球団の五十井広報本部広報部長は「キャンプ地の久米島や金武町でも、ボールパーク化を推進できるポテンシャルは十分にある」と話した。本拠地球場の動員率が80%、90%と高まる中で、さらなる収益化のために春季キャンプを活かさない手はないだろう。

球団ビジネス、地域振興、さらには野球の普及を考えるうえでも、プロ野球キャンプはまだまだ進化の余地があるのではないか。引き続き、ウォッチしていきたい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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