「お金持ちが好き」42歳女性、10年婚活の顛末 ブレない看護師がついに見つけたお相手は…

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ただし、智美さんは最初から和幸さんに心惹かれていたわけではない。顔立ちが好みではなく、女性の扱いも不慣れだったからだ。

「付き合っている感覚がないままにデートしていました。会うたびに彼は手作りのお菓子をくれるんです。シュークリームとかタルトとか。しかも、荷物になるからという理由で別れ際に渡してくれる。出張先の名古屋で仕事が大変なときに電話口で泣いてしまったら、東京から会いに来てくれて慰めてくれたこともあります。いつも仕事を頑張っている私のことが好きだと言ってくれました。私にはもったいないぐらい優しい人なんです」

和幸さんの温かい家族

結婚後も、智美さんの幸せは続いている。2人の子どもに恵まれ、家事にも育児にも積極的に参加する和幸さんと一緒にかわいがる日々だ。智美さんが何よりもうれしかったのは、西日本の某県に実家がある和幸さんの温かい家族に歓迎されたこと。

「おじいさんとおばあさんも健在で同居していて、お正月は親戚一同17人も集まって過ごすんですよ。食堂みたいですごく楽しいです。地域の名士であるおじいさんは家長として尊敬されていて、公務員のお父さんはとっても人格者。癖の強い母だけに育てられた私は、『これがちゃんとした日本の家族であり、お父さんなんだ』と今さら体験させてもらっています。ずっと欲しかった家族を取り戻している気分です。夫の実家が好きすぎて、子どもたちを連れて年間30泊ぐらいしちゃっています。自分の実家には年に1泊しかしないのに……」

9歳も年上の妻だという負い目もある智美さん。その分だけ和幸さんを大事にしているつもりだ。そして、看護師という仕事柄もあって、和幸さんの祖父母の長話はいくらでも聞けるし、病気の際は適切な対応をした。その姿勢は和幸さんの家族にも十分に伝わっている。

「すごくかわいがってもらっていて、おじいさんは私たちに都内に土地を買ってくれました。23区内の一等地です。おかげさまであこがれの生活を送れています」

和幸さんにはきょうだいがいるが、祖父母は彼らにも相応のおカネを渡してあげている。和幸さんと智美さんが妬まれるようなことはない。金持ちケンカせず、を地で行く家族なのだ。

「私は恋愛好きなので、今の夫以外の男性と結婚していたら、今ごろ浮気をしていたかもしれません。でも、結婚生活にとても満足していますし、離婚するリスクを万が一でも冒したくないので、浮気をせずに過ごせています」

正直に言って、智美さんは「性格がいい」とは言い難い女性だ。筆者が同性だったら「嫌な女」だと感じたかもしれない。しかし、智美さんは貪欲なほどのハングリー精神と行動力で豊かで幸せな家庭をつかみ、大切に育てている。その幸福はあふれ出るほどの質量であり、周囲の人にも優しくなれているようだ。結婚の神様は善人にではなく、努力する人だけに気まぐれにほほ笑むのかもしれない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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