イタリアで「EU懐疑主義政権」誕生に現実味

総選挙の結果を市場は楽観しすぎている

しかし、今のところ、ユーロ相場の反応は限定的だ。

ローマの投票所で投票するパオロ・ジェンティローニ首相(写真:REUTERS/Remo Casilli)

幾つかの理由が考えられる。そもそも議席が確定する段階に至っていないからかもしれない。トランプ政権の通商政策への懸念のほうが大きいとも考えられる。4日にドイツで5カ月以上続いた政治空白解消のメドが立ったことが下支えとなっている可能性もある。

さらに、過半数を制する政党や政党連合がない「ハングパーラメント」は事前の段階で予想されており、欧州他国の事例を見る限り、イタリアで政権協議が数カ月にわたったとしても、経済に大きな影響を及ぼすことはないと見られているのかもしれない。ドイツのほかにも、オランダでは2017年3月の総選挙から政権発足までに7カ月を要し、スペインでは2015年12月の総選挙の後、再選挙を経て、2016年11月に少数与党政権が発足するまで1年近くを要した。いずれの国でも大きな問題は生じなかった。

五つ星運動も、一時期ほど、ユーロのリスクとして強く意識されることがなくなった。そもそも、五つ星運動勝利ならユーロ離脱に発展しかねないという懸念が行きすぎだったこともあるが、五つ星運動が、昨年のフランス大統領選挙の国民戦線の失敗を教訓にしてか、「ユーロ離脱の是非を問う国民投票」を公約に盛り込まなかったこともある。政権入りする場合、他党との連立を組むことになり、極端な政策に突き進むことはないという期待もある。

市場は楽観しすぎ、新政権の運営能力に不安

しかし、市場はやや楽観し過ぎているかもしれない。

31歳のディマイオ党首率いる五つ星運動の国政運営能力には疑問符が付く。腐敗や汚職との関わりは薄く、既得権益の打破には一定の役割を果たすかもしれない。インターネットを通じて有権者の望みを吸い上げる力はある。ただ、イタリアにとっての必要性という観点から、優先順位をつけて政権を運営するような手腕は期待できない。

EU(欧州連合)との関係にも不安が残る。ユーロ導入の是非を国民投票で問うような極端な政策を実行しないにせよ、ユーロの信認を脅かすリスクは残る。イタリアには、ユーロ導入国としてEUの財政ルールを尊重する義務がある。仮に、五つ星運動を主体とする政権が、支持者の求めに応じてEUの財政ルールに合わない財政拡張に突き進もうとすれば、市場の強い圧力にさらされるだろう。

イタリアの政府債務残高は、2017年9月末時点で名目GDP比134.1%。日本に比べれば低いが、ユーロ圏ではギリシャの177.4%に次いで2番目に高く、金額では経済規模が大きい独仏を抑えて最大である。国債の非居住者による保有割合がおよそ3割と日本の1割よりも高く、外国投資家のリスク回避的行動で価格が変動しやすく、その財政運営への影響は決して小さくない。

現在のユーロ圏は、自力での資金繰りが困難になった国を支援する枠組みとして金融安定メカニズム(ESM)を備えているが、EUの財政ルールを尊重していなければ、救済を受ける権利はない。

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