先進国において貧困層が選挙結果を左右することはあまりない。だが、3月4日に総選挙を控えたイタリアでは貧困層が草刈り場になっている。中道右派政党「フォルツァ・イタリア」を率いるシルビオ・ベルルスコーニ元首相(公職禁止の有罪判決を受けている)と、コメディアンでポピュリスト政党「五つ星運動」の党首、ベッペ・グリッロ氏が共にベーシックインカム導入を唱えているのだ。
貧困層に毎月、気前よくおカネを支給することになるこの公約は、制度設計からしてまゆつばものだ。とはいえ、少なくともこれによって急速に深刻化する欧州の貧困問題に光が当たったのは事実だ。
イタリアでは貧困層が10年で3倍に
もちろん、貧困層の全員が悲惨な生活を送っているわけではない。が、多くは困窮しており、イタリアでは貧困層が選挙結果に与える影響は無視できないものになった。全人口の約8%、500万人近くが生活必需品すら買う余裕がなく苦しんでいる。しかも、こうした貧困層の数は、わずか10年で3倍近くに膨れ上がっているのだ。
欧州全体の状況も、同様に深刻だ。欧州連合(EU)では1億1750万人、域内人口のおよそ4人に1人が貧困層に転落するか社会的に疎外される危機にさらされている。その人数は2008年以降、イタリア、スペイン、ギリシャにおいて600万人近く押し上げられている。フランスやドイツでも、貧困層が人口に占める割合は20%近辺で高止まりしたままだ。
2008年のリーマンショック以降、貧困層転落のリスクは全般に高まったが、その傾向は若者において顕著だ。年金を除く社会保障給付がカットされたのに加え、既存従業員の雇用を守るために新規採用を犠牲にする労働市場のあり方にも原因がある。2007〜2015年に欧州では18〜29歳の若者が貧困化するリスクは19%から24%に上昇したが、65歳以上の高齢者については逆に19%から14%に低下した。
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