アマゾンおひざ元「シアトル」悩ます異常事態 人口が急増し穏やかな生活が脅かされている
「アメリカでは政権が変わると、街もガラッと変わってしまう」。アマゾンやマイクロソフトが本拠地を置く米ワシントン州シアトルは、豊かな自然に恵まれた、米国屈指の「住みやすい街」である。が、最近では市民から冒頭のような「嘆き」が少なからず聞こえてくるようになった。
実際、筆者が経営する会社は、シアトル市のダウンタウンから10キロメートルほど離れた所にあるが、たまに打ち合わせなどで街の中心部に行くと、「あれ、シアトルって、こんな場所だった?」と、確かに首をかしげてしまいそうになることが増えた。
シアトルを悩ます3つの存在
この街の人は元来、人当たりがよく、みな「気さく」な人が多い。成功していても、スーツで全身をキメるよりは、ラフな服装で自転車を楽しむのが好きという飾らない人が多いし、移民や性的マイノリティにも優しい土地柄なので、誰に対しても、どんな文化に対しても寛容性がある。そこがこの街の強みであり、すばらしさだ。しかし、やはり最近、何かが違う。街も人も何となく行き詰まっている感じがするのだ。
リベラルな土地だけに、確かに政権への反発はある。しかし、それでも、それだけを理由にするのは無理がある。では、いったいなぜシアトルは変わったのか。具体的な理由は3つある。肥大化し続けるアマゾン・ドットコム社の存在と、それに伴う渋滞の悪化、そして増え続けるホームレスの3点だ。
大リーガーのイチロー選手がシアトル・マリナーズに在籍していた頃は、日本からの観光客も非常に多かったが、日本人にとってシアトルは、ニューヨークやロサンゼルスに比べると、なじみが薄い土地かもしれない。しかし、この街はマイクロソフト、ボーイング、スターバックス、コストコなどの大企業が本社を構える街である。その中でも、圧倒的な存在感を放っているのが、アマゾンだ。
アマゾン本社があるのは、シアトルダウンタウンの北端。ユニオン湖に近く、街中にありながら解放感もあり、散歩を楽しみたくなるようなすばらしいロケーションだ。実際、本社を訪ねてみると、社内の敷地で、散歩を楽しんでいる人が非常に多い。理由は犬。アマゾンは「犬に優しい企業」としても知られており、愛犬同伴で出勤することができる。受付にもドッグフードが置かれ、エレベーターの表示にも犬のイラストがついているほどだ。
世界的な大企業でありながら、社員の飼い犬にも配慮する社風、そして当然のことながら好待遇と聞けば、アマゾンで働くことは、多くの人にとって憧れでもあるだろう。
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