アマゾンおひざ元「シアトル」悩ます異常事態 人口が急増し穏やかな生活が脅かされている

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シアトルはもともと大きなホームレス問題を抱える都市だった。そんなシアトル市のあるキング郡が、ホームレス撲滅10年計画を発表したのは2005年のこと。10年以内でホームレスを限りなくゼロにするはずだった同計画に、当時は誰もが期待したようだが、実際には失敗に終わっている。

計画の最終年であった2015年、シアトルのホームレス人口はゼロに近づくどころか、過去最大になった。アメリカ住宅都市開発省が同年発表したデータを見ると、シアトルのホームレス人口はニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスに次ぎ、全米ワースト4位。しかも、その翌年にはさらに1408人もホームレスが増えて全米ワースト2位になり、シアトル市は緊急事態宣言を発令するまでに至った。

アマゾンに代表される国際企業が名を連ね、裕福な人たちが多いとされる一方で、シアトルでは広まる格差から、ホームレスに転落してしまう人は後を絶たないのだ。また、最近ではあまりに市内にホームレスが増えてしまったために、シアトルの救済施設に入り切らなくなった人たちの多くが近郊の都市に流れる傾向も見られている。特にシアトルから南に位置するタコマ市では子どものホームレスが急増しており、公立学校にはホームレスの子ども専用の救済部屋まで用意されている異常状態だ。

アマゾンがホームレスシェルターを開始

タコマ地域で現在確認されているホームレスの学生の数は4600人にも上る。ホームレスの子どもは1年で20%も増えたという。しかも、そのうちの半分は小学生なのだ。小さな子どもたちが飢えて住む場所がない――こんな悲しいことはないだろう。

ホームレスが増えた原因の一端は、アマゾンのような国際企業が好待遇で人を雇い続けることで、周辺地域の住宅価格を押し上げているせいだという批判をかなり耳にする。その罪滅ぼしなのだろうか、アマゾンは現在増設中の本社ビルに65家族を収容できるホームレスのシェルターを併設すると発表した。

この支援は、女性や子どもへの人道支援を行う非営利団体「メリーズ・プレース」との共同事業だ。完成すれば、常時200人の家族にシェルターを提供することができるようになる。タコマ市にあふれかえっている子どものホームレス救済にも、役に立つかもしれない。本社敷地内にホームレスがやってくれば、アマゾン社員たちもボランティア活動をする機会を得ることになるだろう。シェルター完成は2020年。建設にかかる総予算は数十億円規模だという。

しかし、せっかくホームレスたちに手を差し伸べているのに、それに対する批判もあるようだ。「アマゾンがやっていることは、企業イメージアップでしかなく、ワザとらしい」と酷評されてしまった宣伝ビデオが話題となっている。

アマゾンがシアトルを拠点にしたことで、雇用が生まれ、街が活性化されたことは確かだ。一方で、シアトルはその「副作用」を消化できないでいる。今後、この解決策を見いだせたならば、シアトルは成長する街の新たなあり方を示せるのかもしれない。

ジュンコ・グッドイヤー Agentic LLC代表、Generativity Lab代表

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Junko Goodyear

アメリカ在住。青山学院大学卒業。日本にて約20年の企業経営のち、現職。日本企業のアメリカ進出、アメリカ企業の日本進出のコンサルテーション&サポートほかを行っている。シアトル近郊最大の子供劇団のひとつ『Kitsap Children’s Musical Theatre』顧問を務めながら、次世代継承と・社会還元共有型マーケティングを考える『ジェネラティビティ・ラボ』も主宰している。

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