アマゾンおひざ元「シアトル」悩ます異常事態 人口が急増し穏やかな生活が脅かされている

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そんなアマゾンが先日、アメリカ国内に第2本社を設立する計画を発表した。全米から誘致に名乗りを上げる街が殺到していると聞くが、アマゾン1社がもたらす経済効果を考えれば、それは当然の流れだろう。同社を誘致するだけで、そこに多くの雇用が生まれ、街が活気づくのだから、のどから手が出るほどアマゾンに来てほしいと願う街はあるはずだ。

しかし、実際に同社があるシアトルの住民として発言をしてもよいならば、「アマゾン誘致は、いいことばかりじゃないですよ」と伝えたい本音もある。

アマゾンの従業員は昨年1年で11万人増加

アマゾンがシアトルの街に与えた影響はよくも悪くも非常に大きい。シアトル・タイムス紙によると、事業が拡大し続け、従業員数も増え続けたアマゾンは、現在シアトル市内中心部のオフィス面積全体の19.2%を所有しているという。たった1社でこれだけの面積を占める都市の例はほかにない。

アマゾンによると、同社の社員数は昨年末時点で34万人。昨年1年だけでも、11万人も増えたという。これだけ急激に人が増えると何が起こるか。1つは住宅難である。

アマゾンの成長と比例するかのように増え続ける人口によって、シアトルは現在深刻な住宅不足に陥っている。想像にたやすいが、そうした状況下では不動産は完全に売り手市場になるため、物件が恐ろしいほどの高騰ぶりを見せている。冗談のような古い家でも、冗談のような値段で素早く売れていく様子には驚かされるばかりだ。

先日も友人が、1940年代に建てられた、雨漏りがするボロボロの小さな家を売りに出したが、市内でも人気のエリアだという理由で、売りに出した途端に購入希望者が20人も殺到した。アメリカでは売り手に買い手が「いくらで購入したい」というオファーを出して売り手に値段を提示するが、どんどん値段が吊り上がってしまい、最後には日本円で1億円近い値が付いたというのだから本当に驚きである。売った本人ですら、喜びつつも「普通なら、ありえないこと」と困惑ぎみだった。

シアトル市があるキング郡の発表では、今夏に売れた不動産の平均価格は約65万ドル(約7200万円)で、前年度平均より14.6%上昇した。「いつか、この住宅バブルは弾けるだろう」と誰もが不安を口にしているが、不動産実績の数字は上がり続けており、一向にその気配は感じられない。

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