アマゾンおひざ元「シアトル」悩ます異常事態 人口が急増し穏やかな生活が脅かされている
「The Puget Sound Reginal Council」のデータを見ると、昨年シアトルの人口流入数は、今世紀に入ってからの最高値を記録していることがわかる。平均すると、1日に約250人がシアトル市に引っ越してくる計算になる。現状シアトル市内で働いていても、家を市内に所有することはかなり難しいため、市の郊外に家を求める人も増えており、その数を入れたら実数はもっと増えるはずだ。
そして当然のことだが、急激な人口増に伴って、シアトルおよび近郊都市の渋滞は年々ひどくなっている。リアルタイム交通情報を配信するINRIXが発表した昨年のデータによると、シアトルに仕事で通う人が1年間に巻き込まれる渋滞時間の平均は55時間。これは全米ワースト10位、世界ではワースト23位に入る。
渋滞に巻き込まれる時間は増える一方
車通勤をやめて、公共機関を使う人も急増しており、47%は自転車や公共機関、「カープール」と呼ばれる相乗り車などを利用しているとのことだが、それでも渋滞は緩和されず、1年間に巻き込まれる渋滞時間平均は、むしろ年々増え続けている状態だ。INRIXによると、来年にはこの数字は66時間を超える見込みだ。
実際、シアトル在住の人からは、「車で20分程度のところに行くにも1時間かかる」「渋滞がひどすぎて直接会って打ち合わせをするのもはばかれる」といった声が聞こえてくる。
また、アマゾンに勤める人たちが、配車サービスのUber(ウーバー)を使いまくることで、渋滞をさらに悪化させているという声も聞く。シアトル市内に住んでいれば、バスで会社まで行けるはずなのに、ウーバーを通勤手段に選ぶ社員は少なくないようだ。シアトルに住む友人たちは「ただでさえアマゾンのせいで渋滞が悪化したのに、勘弁してほしい」と、ぼやいている。
住宅高騰に渋滞の悪化。これらはシアトル市民が疲弊し、街の雰囲気が変わってしまった大きな要因であることは間違いない。アマゾンの第2本社を誘致したい州や街は、はたして、こうしたシアトルの現状をいったいどのくらい把握しているのだろうかと、思わずにいられない。
もうひとつシアトルが変貌してしまった大きな理由がある。それはホームレスの存在だ。
ホームレスが増えたのは、人道的支援に手厚かったバラク・オバマ政権が終わり、トランプ大統領が社会保障にかかわる予算を削減しているせいだと非難する人もいるが、残念ながらそうとは言い切れない。確かに政権交代後にホームレスは明らかに増えてはいるが、それは毎年のことなので、何も今に始まったことではないからだ。
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