「レクサスLS」が最新進化で果たす役割と課題 安全と運転支援技術でトヨタの先頭を走る

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ハイブリッドモデル、ターボモデルともにドライバーの意図を忠実に読み取るスムースな走りを見せるなかで、ターボモデルは加速力を決めるエンジントルクの特性に優れていることから重量級ボディ(2150~2350kg)でも人の感覚に合致する気持ちの良い加速を体感できる。

ハイパワーエンジンモデルにありがちな運転の難しさはなく、人が歩くようなゆっくりとした微速域からのアクセルコントロールも柔軟に受け付けてくれるので、信号からの発進時に同乗者の頭が勢いよく後ろへもっていかれることがない。おしなべて滑らかさが先に立つ。

低速域から高速域まで終始一貫したスポーツ性能がセールスポイントだ(写真:©1995-2017 TOYOTA MOTOR CORPORATION)

一方、ハイブリッドモデルはLCから導入されている「THS Ⅱ」に4速ATを組み合わせた新しいハイブリッドシステムである「マルチステージハイブリッド」によって、低速域から高速域まで終始一貫したスポーツ性能がセールスポイントだ。LSが属するセグメントでは、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」が直接のライバルとなるが、LSのハイブリッドモデルはそれらと比較してドライバーズカー的な要素、つまり積極的に走りを楽しむところに開発の中心が置かれている。

現時点での課題

歴代LSの威信を懸け開発が進められたLSだが、現時点では課題もみられる。それはドライバーズカーとしての高い走行性能の実現と、後席にVIPを乗せて送迎するショーファードリブン的な使い方にも対応する快適な居住空間の両立だ。

ドライバーズカーとしての課題は、スポーツ走行を行った場合の車両挙動が大きく、加えて車両の走行性能を制御する「LDH/Lexus Dynamic Handling system」や、後輪を操舵する「DRS/Dynamic Rear Steering」の介入度合いにしても過剰と感じる部分があるところ。ショーファー的な課題はハイブリッドモデルの後席における乗り心地に荒さを感じる点である。

このあたりをズバリ開発者に聞いてみた。

「やりきれてないところがあることは認識しています。ただ、たとえば後席の乗り味では、ランフラットタイヤ(パンク状態でも一定条件下で走行可能)から一般的なノーマルタイヤへ変更すればほぼ解決することもわかっています。しかしランフラットタイヤには、運動性能の向上や万が一の際でも交換スポットまで自力でたどり着けるという安全性が担保されることから採用に踏み切りました。近い将来、ノーマルタイヤを超える乗り味をランフラットタイヤで実現すべく開発を継続しています」

クルマの土台となるGA-Lプラットフォーム、ボディ設計、そしてエンジンをはじめとしたパワートレーンに至るまですべてを新規で作り上げたLS。この先は、トヨタの得意とする技術の「手の内化」とともに半年も待たずして熟成が図られていくはずだ。ここは技術の昇華に期待したい。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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