「都こんぶ」、ロングヒットの知られざる歴史 健康ブームに乗った中野物産4代目の手腕

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「ただそれまでまったく違う仕事をしていましたので、カルチャーショックでした。まず社員の皆さんに自分を認めていただかないといけません。現場に入って話をしながら、徐々に安心してもらい、それからいろいろと仕事を進めていきました」と盛正社長。「都こんぶ」の製造は手作業で行われています。季節によって酢につける時間が違うなど、実は職人的な仕事です。

それを知るからこそ、盛正社長は職人気質を尊重し、十分な話し合いの時間を設けたのです。

そして1990年代後半から健康ブームが到来。昆布は、低カロリーというだけでなく、甘酸っぱい味で唾液が出やすく、満腹感も刺激してくれます。加えて、最近話題の糖質制限にも効果大。「都こんぶ」1箱15グラムに含まれる糖質は2.3グラムですが、同じ重さのせんべいの糖質は12.3グラム。5倍以上も違う計算です(せんべいの糖質量は江部康二著『食品別糖質量ハンドブック』洋泉社より)。

ダイエットと健康に最適

口寂しい時の間食として、ダイエットと健康に最適。まさに時代の求めるおやつと言えます。冒頭に挙げた「パリパリっとパリリ昆布 ごま&オニオン」や「昆布と梅のグミ物語」も、そうした時代の要請に沿った新商品なのです。中野社長は「そんなにドラマチックに増えていませんよ」と謙遜されますが、堅調な増収ぶりで、今や売り上げも23億円になりました。

女性のニーズを踏まえ発売した「コラーゲン1000mg 酢っきりこんぶ 梅味」(写真:中野物産)

また昆布には、ミネラルや植物繊維も豊富に含まれているので、肌や髪の色ツヤにも効果があるとされ、女性に嬉しいおやつでもあります。

盛正社長はこうした女性方のニーズを踏まえ、2017年5月29日「コラーゲン1000mg 酢っきりこんぶ 梅味」を発売しました。「この商品は普通の昆布よりも食べやすいように、かなり柔らかくしています。世の中のダイエットや健康志向を考えて女性社員が開発しました」。

ここにも、従業員の視点を大切にする4代目社長の真摯な姿勢が感じられます。これからも、社長・従業員一丸となった努力で、「都こんぶ」の魔法の粉がさらに日本国中に振りまかれることを期待しています。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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