82歳プログラマーが懸念する「シニアの危機」 IoT時代は「デジタルが苦手」で済まされない

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――シニア層に理科の知識が乏しいのは、時代の影響があると。

もちろん、時代の影響というのは昔からあることです。たとえば私の母は、初めて銀行のATMでおカネを下ろした世代。ATMできちんとおカネが下ろせるか、自分の番が来たら心臓がドキドキした、と言っていました。駅の自動改札も同じ。私の母は初めて自動改札を通るとき、通れなかったらどうしようと怖かったと(笑)。それでもわれわれの親世代は必死になって追いついて、苦手を克服してくれた。前提となる知識を教えてもらっておらず、その結果として技術進化に置いていかれそうになる状況というのは、昔からあったと思うんです。

でも今、技術進化のスピードがどんどん早まっています。だから今のシニア層は、取り残される人がより多くなるのではと危惧しています。

――実際にどのような事態を危惧していますか。

若宮正子(わかみや まさこ)/1935年生まれ。銀行を定年退職前後に、パソコンを始める。ネット上の高齢者クラブ「メロウ倶楽部」の創設メンバーの一人。2017年、スマホ向けアプリ「hinadan」を開発。政府の「人生100年時代構想会議」の有識者メンバー

たとえば江戸時代と比べるとわかりやすいと思います。料理の味付けをするとき、江戸時代にはおそらくしょうゆと酢、酒くらいしか使わなかったのではないでしょうか。それが今では、ソースとかドレッシングとか、とにかく種類が豊富。一事が万事で、今の時代はものすごく大量の情報に囲まれて暮らしています。

私は今、認知症が増えている背景には、社会の変化が激しいので、ついてこられなくなった人が増えている状況があるのではと感じています。おそらく江戸時代に生きている人は、同じように生活していても、認知症だなんて言われなかった。認知症の人が増えたというより、そう言われるような社会的要因が大きいのかもしれません。

私が今心配しているのは、「IoT」などというモノのインターネットがこの先、どんどん普及していくと、時代についていけませんでは許されない状況になるということ。今までは「私はコンピュータが嫌いですから、スマホもパソコンも使えません」で済んでいても、これから先、冷蔵庫や洗濯機もインターネットにつながる時代になれば、「使えません」では済まなくなる。そうなると、時代に置いていかれるシニアが増える可能性があります。だからこそシニアも学び直しを通じて、技術進化についていく必要があるはずです。

プログラミングは究極の“脳トレ”

――具体的にはどんなことを学び直すべきと考えますか。

シニアと言っても、60代からの「ヤングシニア」と70代後半以上の「ハイシニア」とは、学び直すべき内容を分けて考えるべきでしょう。

ヤングシニアにお勧めしたいのは、先ほど話した理科の学習です。もちろん、すでにそうした知識に詳しい人には必要ないかもしれません。でも、そうでない人は今の技術進化のスピードについていくだけの、最低限の理科の知識を学び直したらいいと思います。

そのためには、乾電池を並べ、電気を流し、直流と交流について学ぶ、といった実験も必要になりますね。それをやるには、たとえば廃校の理科教室を開放するなど、国や自治体がかかわって環境を整備していただけるといいと思います。

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