82歳プログラマーが懸念する「シニアの危機」 IoT時代は「デジタルが苦手」で済まされない

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自身も銀行を定年退職前後にコンピュータを学び始めた(撮影:尾形文繁)
人生100年時代、複数のキャリアを渡り歩く“マルチステージ”の人生を生き抜くコツとして注目されているのが、リカレント(学び直し)教育である。2月19日発売の『週刊東洋経済』は「ライフ・シフト 学び直し編」を特集。広がりつつある社会人の学び直しの現場やそのノウハウを紹介している。
そうした中、かねてシニア層の学び直しの必要性を訴えていたのが、82歳の現役プログラマーとして知られる若宮正子さんだ。若宮さんは81歳のときにスマートフォン向けゲームアプリ「hinadan」を開発。米アップル本社の世界開発者会議「WWDC」に招待され、ティム・クックCEOに絶賛されたことで一躍脚光を浴びた。
2017年秋には安倍晋三内閣が設置した「人生100年時代構想会議」の有識者メンバーに起用され、今年2018年2月にはアメリカ・ニューヨークで国際連合の事務局が主催する会議に招かれ、シニア層によるデジタル技術活用の意義を英語でスピーチした。若宮さんが考えるシニアのあるべき学び直しの姿とは何かを聞いた。

「リケジョ」ならぬ「リケロウ」を増やす

――リカレント教育の大切さを訴えています。

今、「人生100年時代」なんて言われて、寿命が延びています。私が若い頃は、戦争や結核などの病気で亡くなる若い人も多かったけど、そうしたケースも減りました。そんな時代の大人、特に高齢者にとっては、子ども時代の義務教育で習ったことなんて、すでに古びてしまっており“減価償却済み”です。学び直しをしないと時代についていけません。

『週刊東洋経済』2月19日発売号(2月24日号)の特集は「ライフ・シフト 学び直し編」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

――何を学び直すべきでしょうか。

シニア層に対しては理科教育に重点を置いて、「リケジョ」ならぬ「リケロウ」を増やすべきと思っています。というのも、私たちの年代は特に理科の力が非常に低い。実は子ども時代にもきちんと習っていないからなんです。

たとえば、乾電池が液漏れして手にかかってしまったとき、台所の酢をかければいいというのは「年寄りの智恵」だといわれています。ただ、それは「年寄りの智恵」でも何でもなく、乾電池の液がアルカリ性で、酢が酸性なので、かければ中和できるということ。そういう理論的な裏付けについて、われわれシニアは習っておらず、知らない人が多いのです。

理科をきちんと習っていない理由は2つあります。1つは、私たちが小学生だった時代は戦争中で、学校でも理科をじっくりと教える余裕がなかったこと。それから、当時は家庭でも裸電球が灯って喜んでいたような時代。とてもではないけど、その電気が直流か交流かといった知識まで、じっくり学んで身に付けるという状況ではありませんでした。

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