82歳プログラマーが懸念する「シニアの危機」 IoT時代は「デジタルが苦手」で済まされない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

それから、これからの時代はプログラミング学習も重要。私もスマホ用アプリ「hinadan」を開発しましたが、プログラミングは究極の“脳トレ”になります。そのためには、コンピュータの体系的な知識も必要になります。今後AI(人工知能)が進化していくと、プログラミングもAIがやってくれる時代になるかもしれません。そういうAIとうまく付き合っていくためにも、体系的な知識が不可欠といえます。

便利になればなるほど使いこなせなくなるものもある

――ハイシニア層にはどんな学び直しを勧めますか。

ハイシニアに必要だと感じているのが「デジタル駆け込み寺」。つまりデジタル技術がわからないときに、いつでも聞きに行ける場所です。

ハイシニアがパソコンやスマートフォンを使おうとするとき、いちばん最初につまずくのが設定の場面。次が思うように機械が動かなかったときです。そもそも、いちばん面倒な設定をシニアに課すというのがデジタル嫌いにさせる要因。そこは駆け込み寺の和尚さんにやっていただければと。あと思うように動かなくなったときも、少し見て解決してくれるところがあると大きく違います。

実際、機械が便利になればなるほど、逆にシニアにとって使いづらくなるというのは、これまでもありました。たとえば2011年の地デジ移行。それに伴って、地デジ対応テレビが売られ、耳が聞こえにくいシニアのために文字表示機能を増やしたり、とにかくリモコンでいろんなことができたりするようになりました。でもその結果、シニアはどのボタンを押したらいいかわからず、リモコンを使えない人が増えたんです。

若い人は何となく手探りで使い方を覚えてしまいますが、シニアは下手に使って問題が発生してはいけないと思い、怖がって手を出せないものです。

そうした事態を防ぐためにも、やはり駆け込み寺が必要。そこの和尚さんは万能である必要はありません。自分がわからないときには、もっと詳しい専門家を紹介してくれればいい。そういう場があちこちにできてほしいです。

すでに民間ではそういう場が徐々に生まれています。ただ、まだまだ足りません。そこで教える先生の指導者教育や教室の確保などについて、国や自治体のサポートがあればより広まりやすいと思います。

これからは時計でも何でも、あらゆる機器がネットにつながる時代が来ると思います。すると、ある1つの機器が故障したと思っても、本当にその機器の具合が悪いのか、もしくはそこにつながっているネットワークに不具合が生じているのか、パッと見ただけではわかりません。だからこそ、それぞれの機器メーカーのサポートセンターではなく、あらゆる不具合に対処してくれる駆け込み寺が必要なんです。

IoT時代になり、AIとも付き合っていかなければならない時代になれば、人間がいかにコンピュータと共存していくかが問われるはずです。それは簡単に答えが出せる問題ではありません。

今、書店では『君たちはどう生きるか』などの人生論の本がはやっていますね。それも、今多くの人が、コンピュータと向き合う人間力を身に付けなければいけないと感じていることの裏返しかもしれません。そう考えると、学び直しの対象としては哲学も必要になってくるかもしれませんね。理科など実験を伴う学習とは違い、リベラルアーツのたぐいは個人での学習もしやすいと思います。

『週刊東洋経済』2月24日号(2月19日発売)の特集は「ライフ・シフト 学び直し編」です。
許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事