五輪スケート「歌付き曲解禁」はよかったのか それでも羽生結弦は器楽曲にこだわった
ボーカル曲もOKとなれば候補は無限だ。クイーンからコールドプレイ、エルビス・プレスリーにジーン・ケリー、民族音楽に『ラ・ラ・ランド』の映画音楽までさまざまな楽曲を試してきた。
クラシック音楽一辺倒からの脱皮を最も印象づけたのが昨年1月の全米選手権だ。ジミー・マー(22)がショートプログラム曲に、エミネムの「ザ・リアル・スリム・シェイディ」を採用したのだ。
自分の歌で滑るスケーターも
「フィギュアスケートもここまで来たか」と、2度の五輪出場経験があり、今はアイスネットワーク・ドットコムのコメンテーターを務めるマイケル・ワイスは、全米選手権の中継で述べた。「まさかエミネムで滑る選手を見ることになるなんて想像したこともなかったが、なかなかいい」。
最近のインタビューでワイスは、フィギュアには心奪われるような芸術的側面があるとは言え基本的にはスポーツであり、観客のエネルギーをかき立てるような音楽にはプラスの効果が見込めると語っている。
今シーズンにおける自己表現(ただの身勝手だと言う人もいるかもしれないが)の究極の例になったかもしれないのが、リアーナの「ダイヤモンズ」を自ら歌って録音し、それに合わせて演技しようとした米国のアダム・リッポン選手(28)だ。
「そう悪くはなかったがそんなによくもなかった」とリッポンは言う。結局彼は、ショートプログラムで「下品な」クラブミュージックを使うことにした。理由は「自分の声よりも僕自身を体現している」からだ。
五輪が国際試合である以上、楽曲が何語で、どんな文脈で歌われているかは、観客や審判の反応を大きく左右する可能性がある。