(このひとに5つの質問)マーク・チャン ジョブ・ストリートCEO

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(このひとに5つの質問)マーク・チャン ジョブ・ストリートCEO

アジア最大の求人求職マッチングサイト、ジョブ・ストリートが日本に進出する。高いスキルを持ったアジアの人材に日本での仕事を紹介するのが狙いだが、その勝算は。(『週刊東洋経済』7月28日号)

高齢化する日本にアジアの優秀な人材を紹介する

1. アジア各国で事業展開していますが、日本進出の理由は?

マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、インドの7カ国で事業を展開しています。これらの国でトップ2~3%に入るような優秀な技術者を日本企業に紹介し、日本で働いてもらいます。高齢化が進む日本では、アジアの若く優秀な労働力が必要とされていると考えました。

2. 日本の労働市場は閉鎖的だと言われますが、その点はどう見ていますか。

実はオープンだと感じています。サイトを日本で運営していくアジアンコミッション(本社・東京、菱垣雄介社長)は、これまでフィリピンから80人のエンジニアを日本に呼んでいますが、ビザが発給されなかったケースはありません。雇う側のニーズを把握し、正当な在留資格を得られる候補者とマッチングして手続を踏めば問題ないのです。

3. 同じく若く優秀な労働力が豊富な中国の人材との競争についての見方は?

中国の成長スピードは非常に速く、国内での人材争奪戦も激しい。スキルが高い人材を海外に連れて来るのは大変です。たとえば、最近シンガポールには中国でトップ級のプログラマーは来なくなりました。国内にもっと条件のよい職場があるからです。

中国は13億人の人口大国ですが、当社が展開している7カ国の人口は合計15億人。日本の企業には、われわれの進出によって選択のチャンスを提供できると思っています。

4. 日本企業には「外国人を雇うのはコスト削減のため」という発想が根強いようです。

海外の高度人材を使うには、三つの考え方があると思います。一つは工場での進出や、オフショア開発などの現地進出型。これにはそう高いレベルの人材は必要ありません。次に、海外での現地人材を使った研究開発(R&D)。いま日本企業が中国で盛んに取り組んでいますね。三つ目は、本国に残したい高度なR&Dに、海外から招いた人材を活用するという方法です。たとえばインテルは米国でのR&Dに世界中の拠点から集めた人材を活用しています。日本企業も、その方向に行かざるをえないでしょう。

5. 日本国内で仕事をするうえで、言語が壁になる可能性は?

インドネシアでもバングラデシュでも、プロフェッショナルは英語で教育されています。サイトを英語で運営していることには、このような高度人材をターゲットにできるという効果があります。しかし、日本で仕事をするには日本語が不可欠です。日本に行く人材には徹底的な日本語研修を行い、日本語で仕事をしてもらいます。

(撮影:鈴木紳平)

Mark Chang
1965年マレーシア生まれ。1988年にテキサス大学オースティン校卒業、1990年にMITで機械工学の修士号を取得。米国企業勤務を経て1996年にジョブ・ストリートを創業。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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