1300年の伝統「大島紬」が迎えている危機 2016年の生産量は全盛期のわずか1.6%に

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海外に向けて情報を発信する手もあります。福島県川俣町の『齋栄織物』が生産している世界一薄い絹織物「フェアリー・フェザー」は、『エルメス』が今年の春夏物として販売しているスカーフの生地に採用されました。ヨーロッパでの展示会の開催など、積極的なPR活動が実を結んだ結果だと言えるでしょう。

着物として販売するとどうしても高価になってしまいますが、「フェアリー・フェザー」のように生地だけを供給する形であれば、価格をある程度抑えられるはず。スーツの裏地やスカーフ、財布、バッグなどに活用して消費者の目に触れる機会を増やすことができれば、今よりもファンを獲得しやすくなります。

愚直にものを作り続ける求道心

現地を視察して思ったのが、1300年の伝統をたやすく途絶えさせていけないということです。「時代の流れに逆らえない」という言葉で簡単に片付けたくありません。

染色前の「のり張り」工程(筆者撮影)

『泥染め』をはじめ、奄美紬は地理的な特色を生かしていますが、その一方で紬づくりに適していない面もあります。

染色前に行う『のり張り』という工程では、そろえた糸がバラバラにならないようにのりで固め、日光で充分に乾かさなければなりません。

ただ、奄美大島は年間を通して雨が多い場所であり、視察した際にも屋外に糸を干しては雨が降るたびに室内に運び込むというシーンを目にしました。

値段は高価ですが、製造期間の長さや工程の多さが影響し、職人さんの賃金も決して良くはありません。中には、月給3万円の人もいるという話も聞きました。

しかし、こういった環境下にもかかわらず、職人さんたちは愚直にものを作り続けています。その求道的な姿には、合理化や意味づけに満ちた現代が忘れているものがあるようにも映るのです。

復興プロジェクトが一筋縄ではいかないことは重々理解していますが、取り組みがいがあることは間違いありません。大島紬の今後に着目していただけると幸いです。

山田 敏夫 ファクトリエ代表

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やまだ としお / Toshio Yamada

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

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