1300年の伝統「大島紬」が迎えている危機 2016年の生産量は全盛期のわずか1.6%に

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大島紬を実際に織り上げているところ(2018年1月、筆者撮影)

普段使いできる着物として知られている紬(つむぎ)。世界で最も緻密な織物とも言われ、最近ではおしゃれ着としても親しまれています。日本三大紬に挙げられるのが、茨城の結城紬、長野の上田紬、そして今回ピックアップする奄美大島の大島紬。奄美大島は紬発祥の地であり、東大寺や正倉院の献物帳には「南島から褐色の紬が献上された」との記録が残されています。

しかし、大島紬が置かれている現状は穏やかではありません。最盛期の1973年は28万反を生産しましたが、2016年はわずか4700反。近年の着物離れに伴い、生産量が年々大幅に下落しているのです。約1300年の歴史を持つ大島紬を次世代に残すべく、奄美大島で定期診療を行っている吉岡秀人先生のもと、復興プロジェクトが発足。私もその一員として参加することになり、年明けに視察を行いました。

一反が織り上がるまで、半年から1年

大島紬の製造工程は、伝統工芸そのもの。リレー形式で職人さんたちが30以上の手順を踏み、一反(12m50cm)が織り上がるまで半年から1年を要します。

実際の染色工程を説明してくださった職人さん(筆者撮影)

製造工程の中で特に目を引くのが、明治時代から定着しはじめた『泥染め』。奄美群島は、地殻変動やサンゴ礁の隆起によって形成されたため、泥の中には古代地層特有のきめ細かい粒子がたっぷりと含まれています。

その粒子が繊細な絹糸をしなやかに染め上げ、独特の味わいを生み出します。

視察の際には、実際の工程も拝見しました。順序としてはまず、テーチ木(車輪梅)を煮出した液で約20回染めた後、田んぼの泥に浸けてもみ込みます。ここまでの工程を1セットとして、最低でも3セット行うとのこと。もみ込みは素手で行うため、「ハンドクリームはつねに欠かせない」と作業をしている職人さんはおっしゃっていました。

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