ただ、商社の採用の変化を挙げるとすれば、「求める人材」の志向だろう。今までは、どちらかと言うと外資系銀行を採用の競合として意識していたが、ここ最近はベンチャー企業を意識している。会社の将来を考え、起業意欲のある学生など、ゼロからビジネスを作り出すような志向や経験を持った人材を求める傾向になっている。
メーカーも人数の増減はないが、質的な変化が見られる。自動車メーカーや電機メーカーでは、自動運転技術やIoT(モノのインターネット)などに対応するため、情報系の技術や知識を持つ学生が求められている。さらに素材メーカーなどは好調な業績を背景に研究開発に力を入れており、情報系の技術職に加えて研究職の採用人数を増やす傾向にある。
AIや機械学習に関する技術を持つ人材は、メーカーだけでなく、他の業種でもほしい人材だ。しばらくはそうした人材の争奪戦が繰り広げられると思われる。
企業が説明会やセミナーを”絞る”意味
求める人材の変化に合わせ、大手企業の広報活動にも変化が起きつつある。それを見極めることも必要だ。
たとえば、合同説明会などの就職イベントでは、同じ企業が何度も出展、毎回同じ話をしているイメージがあるかもしれない。しかし、企業は、開催する時期や場所、来場する学生の傾向を把握したうえで出展している。つまり、意図を持って、イベントに参加しているのだ。どのイベントに出展しているかは、企業が求める人材を知る貴重な情報といえる。
また、採用人数を絞る企業は、合同企業説明会やセミナー、イベントなどへの出展を減らす可能性もある。そう考えると、関心を持っている企業が出るイベントを見つけたら、機会を逃さずに足を運ぶほうがいい。合同企業説明会やイベントが集中する時期には、どういう趣旨のイベントで、どんな企業が参加しているのかを確認したうえで、行くべきイベントを見極める必要があるだろう。
また働き方改革は、採用の舞台裏にも影響を及ぼしている。メーカーや商社などは、OB・OGや若手社員をはじめとしたリクルーターに、多くの社員を投入していた。が、企業が残業時間の削減を推進していれば、業務負担を減らすため、リクルーターの数を減らすことは容易に想像できる。その場合、企業は限られたリクルーター人材を、どう有効に活用したいか考えているはずだ。
だからこそ、リクルーターと接触したいと考えているならば、自分の意欲をきちんとアピールすることも大切になってくる。企業に問い合わせをしたりして、興味や関心があることを、まず行動として見せる。そして、リクルーターとの話をより密度の濃いものにするべく、予習をしっかりしておくことも大事だろう。