筆者は堺ビッグボーイズの本拠地で取材した帰り、最寄りの駅まで、選手の母親の車で送ってもらった。その母親は、東大阪市から車で1時間近くかけて通っている。以前は、近所のボーイズのチームに男の子を入れていたが、練習がきついうえに監督の言葉が荒くて、子どもが嫌がったという。そこでネットで堺ビッグボーイズの存在を知り、移籍した。
「前のチームの監督にそのことを話したら、”そんなのは野球じゃない”と言われました。でも、前のチームに通っていたとき、息子は雨が降ると”やったー!”と喜んでいたんですが、今は雨になると”なんでやー”と残念がるようになりました。お兄ちゃんが楽しそうなので、妹も通わせています」
早くに目立つ子どもは、かえってあぶない
最近、瀬野は「子どもは早熟させたらあかん」と痛感している。
「小中学校の段階で、目立って野球がうまい子が危ないです。大人がすぐに花を咲かそうとするからです。その先のステージの野球関係者が”即戦力だ”と狙いに来ます。すぐに、試合に起用したがります。もちろん、彼らだって潰そうとは思っていませんが、才能を酷使して結果的にそうなっている例をよく見ます。そのときに潰れなくても、上に進んだときに、それまでの無理が積み重なって、ケガや痛みを発症するんです。
小学校、中学校で目立っていた子どもが、高校や大学に進んで手術することが本当に多い。でも、小学校、中学校の指導者は”あ、あいつも手術しよった”というだけで、自分たちの責任だと思うことはない。その因果関係に気がついていない。
日本の野球では、高校生の間に結果を出せる選手、監督が偉いと言われます。そうではなくて、大人になったとき、野球でいえばプロ野球や社会人野球の選手になったときに結果が出るような教え方をしないといけないんじゃないか、ということです。
たとえば黒田博樹投手は、高校時代まで3番手投手であまり投げていない。大学の後半で出てきてプロ入りした。そして、メジャーリーグでの大活躍を含め、41歳まで一線で活躍することができた。上原浩治投手は高校までは野手がメインで、投手としての機会は大学まで多くなかった。そして、今もメジャーで活躍している。黒田投手や上原投手が中学、高校時代からバリバリ投げていたら、これだけの活躍ができていたか? そうなっていたら、日本球界にとってとてつもない損失ではないでしょうか? 反対に若くして大活躍をして潰れた例は、数えきれないほどあります」
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