「私は若くして世界大会の監督にもなって、海外へも行かせてもらいました。当時から日本は、少年野球でも緻密なプレーができて、繊細で、優秀でした。誇らしい気持ちで、海外の指導者に自分たちの野球を紹介するのですが、彼らは”凄いね”とは言ってくれるけど、そういう野球を”教えてくれ”とは言わないんです。日本の真似をする国はなかったんです。
それやこれやで、自分がやってきたことは、本当に子どもたちのためになっているのか? 大人の自己満足で彼らのためになっていないのでは?と思うようになったんです。12年前、今度は代表として堺ビッグボーイズに復帰しましたが、このときからやり方を変えようと決心しました。
そのときには、筒香選手はもう横浜高校に進んでいました。彼の時代の堺ビッグボーイズは、練習時間はまだ長かったですが、それでも怪我をしないエクササイズを導入するなど、健康には配慮するようになってはいました。
2010年頃に、全面的にやり方を変えました。当時の監督、コーチ、10名ほどの方と1人ひとりと話をしましたが、1人の方を除いて辞められました。今、西武ライオンズで活躍している森友哉選手が中学2年になったばかりのときでした」
トーナメントではなくリーグ戦を
堺ビッグボーイズの改革の柱は「勝利至上主義の排除」と「選手の将来の活躍を見据えた指導」だ。一戦必勝主義のトーナメント戦は、選手に負担を強いるうえに、レギュラー以外の選手の出場機会が少なくなる。ボーイズリーグは大会数が多い。
これが人気の一因でもあるが、堺ビッグボーイズは改革以後、春、夏、秋の連盟主催の大会以外にはほとんど参加しないようにした。練習時間も短縮した。さらに投手の球数を制限するとともに、肩、肘に悪影響を及ぼすスライダーを投げることを禁じた。
「当然ですが、そういう方針にしてから、勝率は以前よりは悪くなりました。もちろん、子どもたちは勝利を目指して一生懸命に頑張ります。それは変わりませんが、うちのチーム独自でストレートを主体としたルールを設けているので、変化球主体のチームに負けることはよくあります。そのため全国大会に出場する機会も以前よりは少なくなりました。
でも、堺ビッグボーイズへの入部者は増えています。今は、なんでもオープンになる時代です。どのチームがどんな指導をしているのか、どういう評判なのか、子どもや親はよく知っているのではないでしょうか?」
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