「夫の浮気」と21年間闘い続けた女の恨み節

「蜻蛉日記」を盛り上げる4大名対決

対決その2、みっちゃん対町の小路の女

ランクが低い、大した才能も美貌もない人が自分より寵愛を受けるなんて、許しがたい。兼家がその女を車に乗せて、みっちゃんの家の前を大っぴらに通ったりして、耐えがたい日々が続く。嗚呼、死にたい、と想いをつづるが、正直なところ、「あの小娘を殺したい」とでも言っているように聞こえてしまう執念深さがうかがえる。そして……。

かうやうなるほどに、かのめでたき所には、子うみてしよりすさまじげに成りにたべかめれば、人にくかりし心思ひしやうは、命はあらせてわが思ふやうにおしかへしものを思はせばや、と思ひしを、さやうになりもていく。はてはうみののしりし子さへ死ぬるものか。(…)わが思ふにはいますこしうちまさりて嘆くらんと思ふに、いまぞ胸はあきたる。
【イザ流圧倒的意訳】
そうこうしているうちに、少し前まではヒートアップしていた町の小路の女との関係は、子どもが生まれたらすっかり冷めたようだ。あの女の命をそのまま生かしておいて、私の望みどおりに、私が苦しんだ分をたっぷりとお返ししたいと、心の中に思っていたが、なんと思いどおりになったわ! ついには大騒ぎになって生まれた子どもも死ぬなんてしてやったり。(…)私より嘆いて苦しんでいるであろうと思うと、やっと満足だわ。

平安京レディースはどう思っていたのか

すさまじい狂気と圧力だ。寵愛を失って、生んだ子どもまで失ってしまった女性に対してそこまで毒を吐くなんて正気のさただと思えない。相当なストレスがあっての本音炸裂なのだろうけど、かなり怖い。

『蜻蛉日記』はプライベートな記録でありながら、平安京のレディースの間で読まれていた作品でもある。障子や御簾で仕切られている薄暗い空間の中で、ひっそりとつぶやき合う女たちは、行間からぷんぷんと漂っているこのやり場のない怒りをどのように受け止めていたのだろうか。1000年以上経っている今でも圧倒されてしまいそうだが、登場人物を実際に知っていた当時の読者はさぞ複雑な気持ちになっていたことだろう。

対決その3、みっちゃん対ぴちぴち娘近江

ずっとではないにせよ、文句ばかり羅列する女と21年も付き合った兼家は、みっちゃんが訴えているほど嫌な奴ではなかったはずだ。何度も小言を言われ、時に断られ、手紙をあさられ、召使に尾行までされていた兼家。みっちゃんが悪者に仕立てようと努力したのは伝わってくるが、実は、怒りっぽいツンデレ貴婦人に翻弄されたのは兼家のほうなんじゃないかと思ってしまうほどだ。

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