情報化社会で真の知識人は「コミュ障」の人間 角川歴彦×川上量生対談(1)

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角川:この前、エンターブレインとアスキー・メディアワークスの担当者が2人でソニーを訪ねていって、「これから宣伝も広告も一体となってやります」と言ったら、ソニーが仰天したんだって(笑)。ゲーム雑誌2つ(「ファミ通」系と「電撃」系)が一緒にやりますということで。

一緒になって、いちばんうまくいきそうなのが広告なんです。広告部は、多様な展開をしたいときに、自分たちの小さなグループだけでは展開し切れないと思っていたらしい。今、いちばん一体感を持って動いているのが広告なんです。統合がすごく難しいセクションと、すごくスムーズに行っているセクションが両方ある。

出版界で初めて成立した絶対王政!?

川上:出版業界で初めて成立した絶対王政。角川会長は太陽王とか(笑)。

角川:まったく憎らしいねえ(笑)。全然、腹で思ってもないことを、うれしそうに言うんだよ。

だいたい川上くんは、僕に焼き餅を焼いているんだ。僕が初めてニコニコ生放送に出演したときに、ひとりで心細かったから「川上くん、君も一緒に出てよ」と言って引っ張ったのです。それまで川上くんはいっさいニコニコ生放送に出たことがなかった。だから、その瞬間に、ドワンゴの社員がみんな僕を応援して、「川上さん、出てください」となって。

川上:いや、応援というよりは、要するに、角川会長の「出ろ」という命令と、僕の「出たくない」という命令で、うちの社員が角川会長を取ったのです。「あ、これが権力か」と思いましたね。これが世の中の真の権力だと、僕なりに思ったんですけど。

角川:そんな権力とかいうのではなくて、社員はみんな出てほしかったんですよ。

――(ドワンゴ会長室の方がフォロー)自分は出ないのに、社員に「出ろ」と言っていましたから(笑)。

角川:そうでしょう? そうしたら、その場の雰囲気は、もう全員が僕の支持だったの。で、川上くんがニコニコ生放送に出たら、「あ、川上くんってかわいいね」「へえ、会長ってこんな人なんだ」と評判がいいわけです。今まで出ていなかったのが不思議なぐらい。で、それ以来、変に僕に焼き餅を焼くんです。

川上:あれはほんとに面白かったです。「こういうことって起こるんだなあ」と思いました。

角川:フジテレビの大多さん(大多亮・フジテレビ常務取締役)がそのときの放送を見にきて、「ああ、いいなあ。昔のフジテレビはこうだったなあ」と言っていました。あの雰囲気。うらやましそうに「僕も舞台に上がりたかったよ」とさかんに僕に言っていましたよ。

川上:テレビも昔はもっと緩かったし、もっとメチャメチャやっていたし、面白かったですよね。

角川:今のニコニコ動画の生放送には、昔のテレビのやんちゃさがあるんだよね。そのやんちゃさが必要なんだよね。

(第二回目は10月10日に公開予定です)

(撮影:西村 康(SOLTEC) 構成:田中幸宏)

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