米国で浮上した「北朝鮮攻撃シナリオ」の中身 朝鮮半島の緊張は収まっていない

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米国が、北朝鮮による長距離ミサイルの準備(2つある主要なミサイル発射場のうち、1つでもミサイル発射台に搭載されていること)を確認した場合、これは国連安保理決議に違反している主張すると同時に、北朝鮮に対してミサイル発射を行わないように警告する。北朝鮮側がミサイル発射を拒否した場合(これは可能性のあることだ)、米国は死傷者を最小限に抑えるために、精密照準爆撃でそのミサイルを破壊する。

米国はその後、精密照準爆撃について、限定的な攻撃であり、国連決議を実行するために意図したものであること、そして金政権への広範な攻撃を狙ったものではないことを明らかにするための声明を発表する――。

過去にも軍事攻撃の選択肢は考えられた

このシナリオでは、北朝鮮はショックに陥り、また、争いが広範に及ぶのをおそれて、即座に反応することはできない、と想定されている。

実は、この選択肢は、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2006年6月22日にワシントン・ポストに掲載された、民主党の著名な安全保障専門家の2人による共同意見記事の中で詳細に述べられ、議論されたことがある。そのうちの1人はウィリアム・J・ペリー元国防長官であり、もう1人は当時のハーバード大学の教授であり、後にオバマ政権で国防長官を務めることになるアシュトン・カーターだった。

その意見記事は次のようなものだった。

「米国は、ある国が米国にあからさまな敵意を向けて核武装し、米国領土に核兵器を打ち込むことのできる大陸間弾道ミサイルを完成させるのを許すべきであろうか。われわれはそうは思わない。ゆえに、もし北朝鮮が発射準備を続けるのであれば、米国は、北朝鮮のテポドンミサイルを発射前に攻撃・破壊するとの意図を直ちに表明すべきである。これは、たとえば破砕弾頭を備えた潜水艦から発射する巡航ミサイルなどにより実行可能だ」

韓国政府は間違いなく米国を支持しないだろうが、いずれにしても米国はそれを遂行すべきであるとまで両者は述べた。米国は「北朝鮮がさらにエスカレートしていくことに対して強い警告を与えるべき」である、と。北朝鮮が戦争を起こすと威嚇してきても、政権を終わらせる可能性を恐れて「それを実行に移すとは考えにくい」と彼らは考えていた。

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