「99.9」「BG」高視聴率が暗示するテレビの危機

「逃げ恥」「半沢直樹」「ミタ」とは真逆の作風

もちろん、それが悪いというわけではありませんが、先述したように、連ドラ全体の過半数を占めるフォーマットにトップ脚本家を押し込むような形は、テレビ業界全体から見たらプラスとは言えないでしょう。事実、岡田惠和さん、宮藤官九郎さん、古沢良太さん、坂元裕二さん、森下佳子さん、遊川和彦さんら、ほかのトップ脚本家が、1話完結の事件・問題解決ドラマを書くことはめったにありません。先月末にお会いした、あるドラマ制作のプロデューサーも、「視聴率がほしいのはわかるが、なぜ今、野木亜紀子さんに1話完結の事件・問題解決ドラマを書かせるのか」と疑問を呈していました。

現在プライム帯で放送されている1話完結の事件・問題解決ドラマは、テレビ朝日が3本中3本、TBSが3本中2本、日本テレビが3本中1本、テレビ東京が1本中1本、フジテレビが3本中0本。テレビ朝日は数年前からこの戦略を徹底していますが、かつて「ドラマのTBS」と称えられた同局が看板枠の「日曜劇場」「金曜ドラマ」で見せた変化は見逃せないのです。

社会現象となった連ドラとは真逆のスタンス

もし目先の視聴率を求めて、テレビ朝日の戦略に日本テレビやフジテレビも追随してしまったら、地上波の連ドラは1話完結の事件・問題解決ドラマばかりになってしまうでしょう。これこそが最大の危機なのです。

先述したように、1話完結の事件・問題解決ドラマは、予定調和の展開を楽しむ時代劇にも似たフォーマットであり、すべての視聴者がそれを望んでいるわけではありません。視聴率には反映されない録画、ネット、ワンセグ経由の視聴者は、「忙しい中でも時間を作って見たい」「好きな時間にじっくり見たい」「セリフを聞き逃したくない」という言わば“ポジティブな顧客”が多く、作品に寄せる思いはリアルタイム視聴の人々を上回るものがあります。

もちろん1話完結の事件・問題解決ドラマにも、熱狂的なファンを持つ作品もありますが、そもそも「今週の放送が終わったら、次週はまたゼロからスタート」という作りのため、記憶に残りにくく、カタルシスも毎週一定のラインにとどまるものです。

実際、2010年代に社会現象となった連ドラは、「家政婦のミタ」(日本テレビ系)、「半沢直樹」(TBS系)、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)、さらに昨秋の話題をさらった「陸王」(TBS系)と、すべて1話完結の事件・問題解決ドラマではありませんでした。視聴率の面では「ドクターX」も引けを取りませんが、「人々の記憶に残る社会現象となった」という点では別次元の作品なのです。

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