「99.9」「BG」高視聴率が暗示するテレビの危機 「逃げ恥」「半沢直樹」「ミタ」とは真逆の作風

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つまり、1話完結の事件・問題解決ドラマは、「人々の心を揺さぶる大ヒット狙い」ではなく、「失敗のリスクが少ない小ヒット狙い」ということ。すると、必然的にこぢんまりとした作品が増え、「地上波の番組は似たような番組ばかり」と思われやすい状況が生まれてしまうのです。

「大ヒットの可能性を放棄して、失敗のリスクが少ない小ヒット狙い」の戦略は、ドラマに限らず、業績の落ちはじめた業界の常套手段。しかし、競合各社が似たような商品を作ることで、徐々に飽きられて小ヒットすら難しくなり、業界そのものが衰退してしまう危機をはらんでいるのです。

低視聴率ドラマがかろうじて多様性を担保

今冬、低視聴率にあえぐ作品を見てみると、オタク女性の成長と恋愛を描いた「海月姫」(フジテレビ系)、母親を陥れたテレビ番組への復讐劇「FINAL CUT」(フジテレビ系)、自分の心を支配する男からの脱皮を描く「きみが心に棲みついた」(TBS系)、身寄りのない少女の血縁を超えた人間ドラマ「anone」(日本テレビ系)、不妊治療を中心にさまざまなカップルの生き方を見せる「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系)、キスするたびにタイムリープするファンタジー「トドメの接吻」(日本テレビ系)と、まさに多種多彩。

現状はこれらの作品がかろうじて連ドラの多様性を担保していますが、今後も1話完結の事件・問題解決ドラマが増えるようであれば、画一化は進み、「地上波の連ドラはそれが好きな人だけ見るもの」というイメージが定まっていくでしょう。

現時点でもテレビをつければ、昼間の再放送から夜の新作放送まで「人が殺される」「犯人を追う」「主人公が追い込まれる」、重い展開のドラマばかり。「そろそろ歯止めをかけなければいけない」というタイミングに来ている気がするのです。

問題の根本は、テレビ局が視聴率という現在の消費者嗜好や生活スタイルに合わない指標にこだわっていること。ビジネスモデルのもととなる重要なものだけに、変えることの難しさがあるのは当然でしょう。しかし、すでに多くの視聴者から「時代錯誤である」ことに気づき、反発の声も上がっているだけに、露骨に視聴率を追う姿勢を見せると、さらなるテレビ離れを招きかねないのです。

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