パナ津賀社長「事業は合理的ではない」の本意 「東京に何でもかんでも集中はおかしい」
津賀:世の中はピンチに陥ることもあるが、いつも発展するものだ、という生成発展が世の中の道理として大事。そして、われわれはお役立ちをどこに求めるのかというと、一商人としての心構えを忘れてはいけないということです。お客様にお役立ちできてこそメーカーであるということです。
このような創業者の言葉とその意味を、私はよく使っています。先ほどおっしゃった「衆知を集めた全員経営」も名言です。(その心は、「この世の中、本当は、わかっているよりも、わからないことの方が多く、知っているよりも、知らないことの方がはるかに多いのである。」(『続・道をひらく』p.180))。もともと、創業者の名言は、重要ながら当たり前のことをわかりやすく表現した言葉ばかりですが、私は、それらをさらにシンプルにして社員に伝えようとしています。そうすることで、自分たちの言葉として定着していくのではないでしょうか。
松下幸之助氏がすばらしい人であることは確かです。必要なときに、その知識、経験に立ち戻らない手はない。ということで100周年に、デジタル技術を使って、創業者の言葉に簡単にアクセスできる仕掛けを作ろうとしています。たとえば、事業部制とは何だったんだろう、事業部制の課題とはどのように認識されたのだろうか。そういったことに対して、振り返られるようにします。
パナソニックの「見えにくい強い競争力」とは何か
長田:セコム創業者の飯田亮さんにインタビューしたとき、「どのような会社が理想ですか」とお聞きすると魅力的な言葉が返ってきました。「艶っぽい会社だね」とおっしゃったのです。その心は、「なぜ儲かっているのかわからない色気のある会社」だそうです。実に掴みどころのない表現にも聞こえますが、粋な表現を好む江戸っ子の飯田さんらしい一言でした。
わかりやすくいうと、イケメンの男性はなぜ女性にもてるのかは説明しなくてもわかります。しかし、現実的には、「なぜあんな男がもてるのか」と不思議に思う男性もいます。この例を企業に当てはめ、競争力を表(表層)と裏(深層)に分けると、裏の競争力を意味しているのでしょう。パナソニックの「見えにくい強い競争力」(模倣されにくい競争力)とは何ですか。新たに創造しようとされているのであれば、それも含めて教えてください。
津賀:まねできないという意味では、目指すところはユニークな会社です。
ただ、お客様のお役立ち(ニーズ)が変化する中で、何がお役立ちにつながるのかわからない。わからないが、なぜか、気がつけばその解決策を提案してくれている、といった会社になりたい。ただし、範囲としては、すべてというわけにはいかないので、比較的、人の暮らしに密着したところにおいて、社会の変化を絶えずよく見、絶えず寄り添うようにしていい提案ができる会社にしたいですね。
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