パナ津賀社長「事業は合理的ではない」の本意 「東京に何でもかんでも集中はおかしい」
津賀:はっ、はっ、は(爆笑)。座布団一枚ですか。たしかに、無意識のうちに人を笑わせようとしているかもしれませんね。それは、(商都の伝統的叡智になっている)大阪人のサービス精神なんですね。合理的な私にもそういうところがあるかもしれません(広報スタッフによると「演歌が好きらしい」とのこと)。
クリエイティブなナレッジ・マネジメントということでは、(グループ全体のBtoBソリューション事業成長の中核を担う)CNS(コネクティッドソリューション)社が良い具体例になります。その前身はAVC社です。AVC社の中心は、家電事業。それらは大阪にあった。それらは、(冷蔵庫や洗濯機といった)白物家電を扱うアプライアンス社のヘッドクオーターがある滋賀県草津市へ移ってしまった。大阪に残っている理由がなくなかったのです。
旧・BtoB事業の中心となっていた松下通信工業は、もともと横浜にありました。家電を外した後のCNSがヘッドクオーターを大阪から東京へ移したのは、極めて自然な帰結です。東京に集積している顧客とのナレッジ・マネジメントを強化するのも大きな目的の1つです。
長田:パナソニックの本社がある大阪府門真市の衰退が注目されています。お膝元だけでなく、京阪電車沿線の高齢化、人口減少、さらには大阪経済のさらなる衰退が懸念されています。そのような中、元マイクロソフト会長の樋口泰行が専務執行役員(コネクティッドソリューション=CNS社長)は、就任するや否や、CNC本社を門真市から東京(中央区)へ移転しました。『週刊東洋経済』(2017.12/16号)のインタビューで、樋口さんは「津賀社長がタブーなしで改革をやってもらっていい、とおっしゃったからだ」とおっしゃっています。
「東京以外の所に本社があると、ほかの会社とのベンチマーキング(比較や分析)を怠って、時代錯誤に陥りやすくなる。われわれが移転を決めたのは、BtoBのお客さんは90以上が東京にいるからだ」とも。この発言で象徴されるように、パナソニックの大阪離れは、今後加速するのでしょうか。大阪発の企業であるパナソニックの「大阪の叡智」による競争力強化については、どのようにお考えでしょうか。タブーなしで、過去とは完全に決別し違う会社、企業文化を構築し生まれ変わろうとされているのでしょうか。
東京ではなく世界を目指している
津賀:東京対大阪の対比で見るのは、もはや時代遅れです。樋口が東京へ行ったのは、引き算した結果、残ったものが東京にある(顧客のほとんどが東京にいる)というのが大きな理由です。パナソニックは東京ではなく世界を目指しています。第2のパナソニックは中国へ、第3のパナソニックはインドへと。そのとき、東京からか、大阪からか、はケースバイケースで判断します。中国で展開するときには、東京から展開するメリットはありません。大阪からも中国行きの便はたくさん飛んでいます。距離も、東京からよりも大阪からのほうが近い。
だから、私の頭の中には、ぜひとも東京で、という意識がまったくありません。東京圏では通勤に往復3時間もかけているような人が少なくないですが、これこそ合理性に欠けている。そんな時間があるなら、別のことに使えばいい。われわれは、大阪に残ったメリットを享受しながら、第2、第3の成長機会を、中国やインドに求めたい。一方、大阪も中国やインドの人が来てもらえるような魅力的な街になればいいわけです。東京に何でもかんでも集中しているのは、どう考えてもおかしいですね。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら