パナ津賀社長「事業は合理的ではない」の本意

「東京に何でもかんでも集中はおかしい」

津賀:テスラとトヨタと、売り先は決まっており、先方の体力も見定められる。その条件下での投資ですから、減損が生じないように、相手と手を握ります。最悪はテスラが破綻するというリスク。これはわれわれも回避できない。これはやむなし。

とはいえ、それをびびっていると投資はできない。われわれは懸けている。一方、つぶれない(と思われる)トヨタに対しては異なる。減損リスクはあるがミニマイムできる構造をつくろうとしている。テスラの「モデル3」の量産は、まだ立ち上がっていないが、立ち上がれば、毎月のようにラインを増設していく必要があります。

長田:パナソニックはヒンズー教文化のインドを戦略拠点にされています。合理性とは対照的な存在である(伝統的)宗教がグローバルビジネスを展開するうえで無視できない要素になってきました。「宗教音痴」といわれる日本人(日本企業)は、グローバル展開するうえで、宗教とどのように付き合っていけばいいでしょうか。

経営者として「宗教と経営」についてのご持論とパナソニックの具体的成功談、失敗談を含めて、そこから得た教訓と対応戦略についてお聞かせください。

津賀:インドの経営はインド人に任せ、日本人はアドバイス役とサポート役に徹している。インドのトップは、コーポレートの役員でもあります。現地人の採用。地域への浸透、現地法人の設立など、インド人に裁量を持たせてやってもらっています。

日本人は優秀な現地人スタッフを見つけ、やる気になっていただく。この仕組みが回り出し、それが大きな輪になっています。すべての国というわけにはいきませんが、成長市場と位置づけているところでは、できるだけそういう形にしていきたいですね。

中国においても同じ考えで展開しようとしていますが、まだまだ、日本人が経営の中核を担っています。中国人に自分たちの会社だと思って経営していただかなくては、発展性は限られている。日本人と中国の方々との強みを掛け算できることが理想形です。そういう意味で、インドは、理想形に近くなってきています。

中国は文化大革命後文革(1966~1976年)後、それほど年数も経っていない。成功企業といっても歴史が浅い。さらに歴史が浅い会社の挑戦を受けて戦っている社会ですから、会社に帰属することが安定につながらない。この点が、100年企業の日本とは異なります。

自分の能力を高めていく、試していくということがいちばん安定につながると考えています。周りを見ると、そのような会話ばかりをやっている。そうすると、日本のようなサラリーマンになったとしても、機会があれば起業する。それを助け合う横-横のネットワークもあり、中国人同士で競い合いますが、助け合うところもありますから。

非合理的である人間組織をどのように動かしているか

長田:「合理主義者」と見られている津賀社長にとって、企業経営につきものの「非合理性の因子」をどのようにとらえていますか。どんどん数理科学化してきた近代経済学でさえ、合理性の限界を言い始め、心理学を応用した行動経済学が台頭。それで、リチャード・セイラー博士がノーベル経済学賞を受賞する時代です。

伝統的な経済学は、経済主体が合理的な計算に基づいて行動するという人間像を前提に理論を組み立ててきました。対して、セイラー博士はその合理性が限られたものであり、人間には認知能力の限界や自制心の欠如があることに着目。そうした人間の特性が個人の意思決定や市場動向にどう影響を及ぼすかを示しました。セイラー博士は受賞直後、「経済の主体は人間であり、経済モデルは人間を前提にしなければならない」と述べています。まさに同感です。

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