「新専門医制度」は医師にも患者にも"迷惑"だ

地方の医師不足を助長、新制度は問題だらけ

 従来の専門医は各学会がそれぞれの評価基準で認定していたため、その基準は学会によってまちまちだった。そこで「日本専門医機構」(以下、機構)という第三者機関が認定することで、専門医のレベルを標準化するしくみをつくった。

その一つが「研修プログラム」だ。新制度で専門医を目指す医師は初期臨床研修を終えた後、19の基本領域で3年間の研修プログラムを受ける。この基本領域の専門医を取得した後、さらに細分化した領域(サブスペシャルティ)の専門医を目指す。

ところが、この研修プログラムを実施できる施設が大学病院や都市部の大きな病院に限定されていたことに批判が集中した。

一つは大学医局の復権が起こるというもの。かつて大学卒業後は医局に入るのが王道だったが、2004年から導入された「臨床研修マッチング」によって、初期研修医は全国の病院から研修施設を選べるようになった。

その結果、大学よりも一般病院で研修を受ける医師が増加している。しかし専門医を取得できるのが大学中心となれば、現場で鍛えられてきた若手医師は、大学に戻らざるを得なくなる。ゆえに大学病院が「強さ」を増してしまうのでは、という懸念だ。

大学病院に若手が集中、地方の医師不足を助長

同時に、都市部に医師が集中することで、地方の医師不足が助長されるのではないかという不安の声が、地域の医療機関からあがり始めた。地域による医師数の偏在は今に始まった問題ではないが、新制度が若手医師の所属病院を左右するとなれば、医師不足にあえぐ地域の中小病院は黙っていられない。

こうした批判が相次ぐなか、延期の決定打となったのは、2016年6月に発表された厚生労働大臣談話だ。当時の塩崎恭久大臣は、地域医療への影響を踏まえた新制度への懸念を示した。

厚労省医政局医事課の堀岡伸彦さんは「この談話は大きかった」と話す。

「本来、専門医は国の制度ではないので厚生労働省が関わる法的根拠は薄いですが、医療法という枠組みの中で国は地域医療に責任を持っています。医師の偏在を加速させないために調整を図るのは厚労省の役割です」

機構は制度の開始を2018年に延期することを決め、地域医療に配慮をした制度の見直しを図った。結果、専門医資格を目指す専攻医の都市部への集中を防ぐため、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)の専攻医の採用を調整し、過去5年間の採用実績の平均を超えないようにする方針が決まったのだ。

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