トランプ大統領が支持率40%を回復した理由 「一般教書演説」で政権2年目の方向性を読む

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そこで1月30日に行われた一般教書演説であるが、ホワイトハウスのホームページには当日呼ばれたゲストの紹介欄が作ってある 。議場の上のひな壇に招待客を呼んでおいて、「この会場には××州の○○さんがお見えです。○○さん、ご起立ください。皆さん、拍手をどうぞ!」などと、場を盛り上げるシーンはご覧になったことがあるだろう。

普通は有名人を呼んで、「えっ、あの人が?」などと驚かせるものだが、この辺がいかにもトランプ流で、紹介されたのは無名の人ばかり。減税のお陰で家を建てた腕のいい職人さんとか、カリフォルニアの山火事から子どもたちを救った功労者とか、退役軍人のお墓に国旗と花を飾ろうとした今どき感心な子供とか、およそごく普通の市井の人々である。ホームページの写真をとくとご覧あれ。こう言っては失礼だが、われわれがアメリカに出張した際に出会うような人たちとはちょっと毛色が違う。トランプ大統領が呼ぶ「忘れられた人々」とは、こんな感じの人たちであったのかと思わせる。

垣間見えたトランプ大統領の「可能性」と「限界」

一般教書演説は大統領らしく堂々としていて、価値や理念にも言及し、国民に統合を呼びかけるものであった。反響もまずますで、直後に行われたポリティコ社の世論調査でも演説を聞いた62%の人々が”Excellent”もしくは”Good”と答えている 。そしてリアル・クリア・ポリティクスで見る政権支持率は、久々に40%台に手が届いている 。

とはいうものの、問題も数々あった。大統領への拍手は、共和党側からばかり聞こえてきた。民主党側の議員としては拍手しづらい。移民政策での合意を求める呼びかけの前に、わざわざ「MS-13」という中南米系不法移民のギャングの話を持ち出し、彼らに娘を殺された両親を紹介して見る者の涙を誘う。

そして「アメリカ人もまた、ドリーマーなのだから」(Because Americans are dreamers too.)と訴える。ドリーマーとは、移民の両親に連れられて入国してきた子どもたちを指すのだが、ここでは普通のアメリカ人だって「夢見る人たち」なのだと言う。トランプ支持者は拍手喝采するであろうが、これでは「移民はアメリカ人ではない」と言っているようにも聞こえる。

あるいは1.5兆ドルのインフラ投資を呼びかける部分では、その前に減税の効果を宣伝し、ついでに「年収5万ドル以下の人たちは、オバマケアの保険加入義務がなくなって良かったね!」と民主党側を怒らせるようなことを言っている。この部分は確かに国民から不評であったのだが、将来的にはオバマケアという制度が崩壊するアリの一穴となるかもしれない。などと、いちいち傷口に塩を塗りこんでいるのである。

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