アニメの可能性を広げる「ネット配信」最前線 「大人アニメ」への期待が高まっている

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AbemaTVのアニメチャンネルでは、地上波と同時配信や、地上波より独占先行配信するケースも出てきている。17年1月には地上波より30分先行する配信を実現した。

最近は制作サイドが、AbemaTVは地上波の視聴率を奪わず、むしろプロモーションを頑張ってくれるので作品の盛り上げに貢献してくれると評価するようになり、先方から地上波と同時配信をやりたいと声がかかることも増えてきたという。

このような制作サイドの評価は、AbemaTVの機能面の工夫によるところが大きい。AbemaTVのユーザーインターフェースは、テレビ放送とは大きく異なる。20chのなかから自分の見たいチャンネルを探し出したり、映像を見ながら番組表を見たりといった操作は、細かいところまで作り込まれており非常に快適だ。

テレビにはできない「盛り上がりの共有」

また視聴者のコメント機能が新たな視聴者獲得にも貢献している。AbemaTVでは番組を視聴しながらユーザーのコメントが見られるのだが、それをツイッターに投稿できる機能をつけたところ、番組に関連したハッシュタグが、リアルタイムでツイッターのトレンド入りすると、それを見た新しい視聴者がきてくれるようになった。特にアニメはその流入が非常に多く、さまざまな企画で毎回ハッシュタグを作っているそうだ(注:ハッシュタグがトレンド入りする=「ハッシュタグ」は、ツイッターで投稿内にハッシュマーク(#)がついたキーワードのこと。キーワード検索が容易にできるようになる。トレンドは、ツイッターのタイムライン上で使用頻度が高く、短時間で急上昇した話題性の高い幾つかのワードが画面上に表示されること。ここに入ることを「トレンド入り」という)

画面に番組の累計視聴数とコメント数を表示する機能もある。例えば「視聴数20K」はAbemaTVの算定では延べ2万回の視聴があったということになる。非常に多いときはKではなくMがつく。ミリオン、つまり100万単位だ。するとコメント欄でユーザーたちが「Mだ!100万だ!」と祭り状態になるという(注:祭り状態=膨大な書き込みが殺到し、コメント欄がものすごいスピードで流れるようになる。17年4月に『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』を日本初配信した時は110万視聴を越え、大きな反響を呼んだ)

みんなで一緒に見る「盛り上がりの共有」は、今の地上波テレビにはない新しい付加価値だ。技術的には放送でも可能だが、かといって現場の努力だけで実現するものではない。AbemaTVは経営トップが自ら率先してサービス開発に臨んでいる。メディア企業の経営者は資質が問われる時代だ。SNSの実態や最新技術の情報などの知見がなければ、進むべき方向を示す旗すら立てられない。さてテレビ局はどうだろうか?

氏家 夏彦 メディア・コンサルタント

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うじいえ なつひこ / Natsuhiko Ujiie

TBSで報道、バラエティ、情報番組の制作、デジタル部門責任者、経営企画局長、コンテンツ事業局長。TBSメディア総合研究所社長、TBSトライメディア社長、TBSディグネット社長を歴任後、2017年7月に独立。『GALAC』編集委員。

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