アニメの可能性を広げる「ネット配信」最前線 「大人アニメ」への期待が高まっている
2017年のNetflixのコンテンツ投資額は60億ドル(約6800億円)だったが、18年は80億ドル弱(約9000億円)まで拡大するといわれている。9000億円、1億人以上という規模は、日本の国内向けメディア企業ではテレビ局を含めても足元にも及ばない。
それが全世界をマーケットにするグローバル企業の力だ。NetflixやAmazonの今後の日本戦略は、アニメだけでなく日本のコンテンツ産業全体に地殻変動をもたらすかもしれない。
5つのアニメチャンネルを展開するAbemaTV
2016年4月にサイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資でスタートしたAbemaTVは、専用アプリのダウンロード数急増で注目された。ニュース、バラエティ、ドラマ、韓流、麻雀、将棋など全部で約20chある(注:約20ch=Abema TVでは、突発で大きなニュースが入ったり大きなイベントが行われたりする際には、そのために1chを臨時に増設して対応している。例えば、通常は23chだが容易に24chにも25chにもできる。こうした柔軟な体制を取ることができるのは、テレビ放送と根本的に異なる点である)が、そのうちアニメは5ch(18年1月時点)と最も多くを占めている。しかし同社アニメ局局長の椛嶋麻菜美氏は「スタート当初は作品調達で苦労した」と言う。
AbemaTVがスタートしたのは、Netflix、Hulu、dアニメストアなど動画サイト全盛期の真っ只中だった。コンテンツ調達のため権利を持つ会社に1社1社足を運んで営業したが、そこでよく言われたのは、「最後発だし、無料でやっていくのは難しいのでは?」という言葉だったという。しかし実際に開局してみると、視聴数の伸びとコメント数が全ジャンルのなかでアニメが圧倒的に多く、当初は全視聴数の約5割がアニメで、今でも安定して3~4割を占めている。
AbemaTVのユーザー層は、全体では他社サイトより10~20代が比較的多いが、アニメに関しては25歳から35歳のいわゆる大人が多くなっている。前出・椛嶋氏は「ユーザー層はもっと広げられる」と言う。椛嶋氏自身はもともとアニメをまったく知らなかったが、開局準備の際に担当することになると、『機動戦士ガンダム』など名作から、深夜アニメを動画サイトのトップランキングまでを片っ端から見て研究した。
そのうち「アニメは面白い、もっと早く知ればよかった」と思うようになったそうだ。「素晴らしいアニメ作品を編成したら、自分のように面白いと感じるユーザーが増えるだろうし、必ず増やすつもりです」と、椛嶋氏は言う。
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