「実業家大統領」が1年で達成した偉業の数々 就任1年、メディアは課題ばかり報じるが・・・

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その結果、昨年10月にイスラム国が本拠地としたイラクのラッカは制圧され、拠点をなくしたイスラム国は弱体化した。テロとの戦いは終わりはしないが、私たちは1年前のように「イスラム国」に怯えることはなくなっている。

国境警備に関してのトランプ政権の施策の目玉は、メキシコ国境に壁を築くことだった。壁の建設は進捗していない。また就任早々発令したイスラム圏などからの入国禁止令で過激派の入国が阻止できたかは疑問だ。この点は今後の課題となる。ただしトランプにとっての問題は、予算の確保もあるが、国境警備や安全保障の議論が人種差別問題にすりかえられがちなことだろう。

彼が移民政策についての会合で口にしたとされる「肥溜め」発言は、言葉としては酷いけれど、たとえば日本で、死んでも住みたくない北朝鮮のような国から次々と不法移民が漂着するのを阻止しようとしたら、人種差別主義者なのだろうか。

規制緩和や法人税減税の進捗は?

トランプ大統領の第二の公約は、貿易協定を見直し、規制緩和や法人税減税により企業の投資を促し、大規模なインフラ投資を行って、雇用を創出することだった。

貿易協定については、TPP(環太平洋連携協定)やパリ協定から離脱し、アメリカファーストの姿勢を貫く一方、就任前にソフトバンクの孫正義社長から500億ドルの投資の約束を、中国では航空機や天然ガスなど28兆円にのぼる巨額の商談をとりつけるなど、精力的にトップセールスを行った。1月下旬にはダボス会議に参加。演説に先立って、シーメンス、ネスレ、バイエル、トタル、ノキア、ABBなどヨーロッパの名だたる大手企業のビジネスリーダーたちと会食し、米国での投資と雇用について前向きなコメントを引き出している。

一方、もっとも大きな成果は、規制緩和へのコミットメントと法人税の減税をはじめとする大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)の成立が、ビジネスリーダーたちの先行き見通しを明るくし、投資や賃上げへの好循環を生んでいることだろう。

規制緩和については、トランプ大統領は就任11日目の2017年1月30日に、規制の削減と関連コストの抑制についての大統領令に署名しているが、ここでは法規制を遵守するためのコストを抑制するため、各省庁は、1項目の新たな規制に対して最低でも2項目の規制を撤廃すべきこと、各省庁の長官は、規制遵守のコストが前年比で増加しないように留意すべきことが求められている。

エンロン事件を受けてのSOX法が記憶に新しいが、営利事業のモラルハザードをゼロにするコストは膨大である。法規制の必要性だけでなくコストも認識すべきという方向性を示したことには意義がある。

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