一方、ビットコインが近い将来本当に通貨のように使われて、他の仮想通貨も含めて通貨の世界の主流になるだろうとまでは思っていない。ビットコインが「デジタル金貨」のような物なのだとすると、細分化は可能だとしても取引の確定にやや時間が掛かるなど支払いに使うにはいさかか不便だし、現在発行量の多くが投機的な目的で保有されているために、価格が不安定で、決済手段として直接的には使いにくいからだ。
「今から買ってもいいでしょうか?」と聞かれたら、「眺めているだけのほうがいいのではないですか」と答える。
一般論として、値上がりがこれだけ話題になって注目を浴びてしまった投資・投機の対象は、リスクを考えて割のいい保有対象でない場合が多い。話題になっているからと言って、売りか・買いかを決めなければならないというものではない。
「将来値上がりするのなら、今買っておかなければもったいないのではないですか?」と言う方がいたら、「買えるという確たる根拠を、今あなたも私も持っていないのだから、もったいないことは何もないですよ」と答える。
「仮想通貨が行き交う世界」の個人はどうなる?
それでも、主流がビットコインではないかも知れないが、仮想通貨が支払い手段として今よりももっと大きな存在感を持つ世界は、遠からず訪れるのではないだろうか。ローコストで信頼性が高い価値の移転手段なので、自然だ。個人、企業、それぞれの当事者間で、銀行口座を使わずに支払いや決済が出来るようになる。
個人にとって、スマートフォンよりも身近で便利な物ができないとは限らないが、現状の延長で想像するなら、取引の支払いも受け取りも、スマートフォンで仮想通貨を送って完結するとしよう。
今筆者が考えている10年程度先の近未来なら、銀行もその支店もまだリアルに存在するのではないかと思うが、銀行のリアルな店舗や銀行員は、携帯電話やスマートフォンが普及した後の固定電話のように、顕著に減っているのではないだろうか。もちろん、その変化で、個人は今よりも便利になっているのだろうと想像できる。
現金の使用は大きく減るだろうから、コンビニエンスストアのATM(現金自動預け払い機)も今ほどは使われなくなるだろう。スマホやカードで、買い物や飲食、サービスなどの支払いも送金も出来るようになるとすると、現金の出し入れには大きな価値がない。現在、収益性があるように見えるATM専業銀行も、おカネの形が変わった将来に、どのような価値を顧客に提供できるのか、再考しなければならないかも知れない。
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