ビットコインは、今から買ってもいいのか 仮想通貨は「本物」でも価値はどう評価する?

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現金は、そのコストが明らかに仮想通貨よりも高い。また、特に高額紙幣による取引は、脱税や脱法行為を行いやすくしているので、現金取引は「遠くない、いつかの時点」で、日本でも減らすことが合理的だろう。

仮想通貨による取引は、課税当局にやる気と能力がないなら脱税の温床になるだろうが、仮想通貨は仕組み上取引記録が必ず残るので、やる気があれば、課税当局はより完全な所得把握が出来るはずだ。

もっとも、そこまでシステムとデータの把握が進むと、確定申告や徴税自体が十分に自動化できるので、税理士は今よりも要らなくなるし、課税当局も大いに人員削減が出来てしまうはずだ。こうした、「税務ビジネスワールド」が持つパラドックスが、どのように解消されるか、されないのかは、近未来にあって、なかなか興味深い問題だ。

もう一点、仮想通貨による決済が銀行口座を通らなくなる場合、銀行は、これまで口座のおカネの流れを通じて持っていた個人や企業の膨大なデータを大きく失うことになる。既存の銀行と仮想通貨がどのような関係になるのかにも注目したい。

「価値」の4つの必要性は不変だが、「扱い方」には注意

元々「おカネ」は形を変えてきた。金貨だったり、銀貨だったり、不換紙幣だったりと主流のおカネは変遷を経てきた。要は、人々が「価値」(価値とは、他人に何かをしてもらえるような力の象徴のことだろう)だと思う物が現在で言うところの「おカネ」なので、将来デジタルな物に主流の形が変わることは大いにあり得るし、それは「おカネ」と呼ばれない物になるのかも知れない。

もっとも、それを「価値」と呼ぶようになっても、人は「価値」を、(1)稼ぎ、(2)蓄え、(3)運用し、(4)将来取り崩す、ことの必要性には本質的な変化はないだろう。

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「価値」の扱い方について自称専門家に相談することは、今の世の中にあって、退職金の運用を銀行員に相談するくらい不適切なことだろう。仮想通貨自体が信頼の出来る物であっても、これを扱っている人間を信頼し頼るのは危険だ。このことは、今から頭に入れて置いたほうがいい。

もちろん、「価値」を運用するにあたっては、やはり分散投資と低コストが合理的だろう。もっとも、利用する対象は人間が運用する投資信託のようなものではなく、何らかのAI(人工知能)を用いた運用の仕組みかも知れない。多角的にやり取りされる「価値」について情報を集め、評価し、投資を組み合わせることは、人間の手作業では難しくなっているかも知れない。

今の「おカネ」の正しい扱い方と背景にある考え方を知ることは、「おカネ」の形が変わっても十分意味があるはずだ。基本をマスターすることの価値は変わらない。

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