37歳、好きな「模型作り」で生きる男の稼ぎ方 中学生から始めた趣味が仕事へと繋がった

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テーマは『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(金子修介監督)に登場する4体の怪獣、ゴジラ、モスラ、キングギドラ、バラゴンとジオラマ2つだった。

それを映画公開直後に雑誌に載せてもらう。すでに映画の撮影は始まっていた。製作期間はちょうど2カ月間しかなかった。

ひどくタイトなスケジュールだ。

「とても大変でしたね。特にキングギドラは首3つもあるし、鱗(うろこ)も立体的で。結果、全然間に合わなくなりました」

はたして映画は公開されてしまったが、まだキングギドラが完成していない。

「『これは無理や!!』とあきらめてホビージャパンに電話したんです。そうしたら編集長がたまたま席を外していてつながりませんでした。その翌日に、ある機械を使ってキングギドラの鱗をきれいに作る方法を思いつきました。試してみたらうまくいって。それで編集長に電話するのはやめて、あきらめずに最後まで作り続けました」

はたして4体の怪獣は完成した。

畳の上で写真を撮って編集長に送ると、約束よりも大きく見開き4ページで掲載してくれることになった。

『月刊ホビージャパン』に掲載されたことにより、版権を持つ東宝から、一般版権の許可が降りた。つまり、いつでも作品を販売することができるようになった。

4体セットで6万円前後の値段の販売だったが、初版はすぐに売り切れた。結果、3版まで売れた。

「21歳の時でした。その時やっと商売になるかも……と思いましたね。それが道を踏み外した瞬間かもしれませんが(笑)」

ガレージキットが最も盛り上がったのは、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(庵野秀明監督)がはやった時だった。エヴァンゲリオンが放映されたのは1995年だ。

竹内さんがプロになった時にはすでに下火になってきていたという。

「正直ギリギリやっていける……くらいの商売ですね。でも好きな物を作って、それを好きな人に買ってもらえるというのはありがたいです」

“樹”にハマる

基本的には怪獣と恐竜ばかり作る日々だったが、2011年は“樹”にハマった。

「そのころ“樹”ってすごいな、かっこいいなって思ってたんです。ちょうど『群龍割拠猫とドラゴン展』というグループ展に誘われまして、そこで“樹”を作ってみようと思いました」

『群龍割拠猫とドラゴン展』はイラストレーターの開田裕治さんが主宰するグループ展覧会だった。さまざまなジャンルのクリエーターが参加する展覧会で、タイトルどおりの“猫”と“ドラゴン”を作品に登場させるのがテーマだ。

「猫とドラゴンはもちろん作ったんですが、僕の中では彼らは脇役で、主役は“樹”でした」

まずは樹を見ようと思った。

神社の息子の友達に頼んで、彼の家にある大きな樹を見せてもらった。大きな樹は横に生えていた別の樹を取り込んで成長していた。そして、その樹の周りにはまん丸の石がゴロゴロと置かれていたり、お地蔵さんのような物が置かれたりしていた。神社にお地蔵さんとはなんだかおかしな話だ。聞いてみると、昔々、供養塔があった跡だという。お墓が建てられるようになった後は使わなくなったが、捨てるわけにもいかないのでそのまま置いてあるそうだ。

次ページ1年間、樹を作ることに費やした
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