37歳、好きな「模型作り」で生きる男の稼ぎ方 中学生から始めた趣味が仕事へと繋がった

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竹内さんの中で妄想が広がっていく。

「守珠」より(写真:@2012 Shinzen Takeuchi)

樹が成長する過程で、周りに置いてある珠(たま)を樹が取り込んでしまうこともあるだろう。そのうちの1つが宝珠になる。そして、それを龍が取りに来る……そんな作品にしようと思った。

「そんな妄想ができたのは、ほかの仕事を断って時間があったからですね。この作品を作るために3~4つ仕事を断りました。1年間、樹を作ることに費やしました」

樹の模型はほとんど作られていない。ジオラマの一部として、スポンジなどを使ってそれらしく見せている作品はあるが、葉っぱを1枚1枚作っている造形物は見たことがなかった。

まずは何の素材で葉っぱを作ったらいいのか試す。コピー用紙、和紙、粘土などさまざまな素材で葉を制作した結果、トレーシングペーパーで作るとちょうどいい具合になることがわかった。そこまでの試行錯誤だけで半年かかった。

レーザーカッターで切り出した葉っぱは1万2000枚

そして残りの半年で樹を制作した。

5~7mmの葉っぱをレーザーカッターで切り出した。その数、1万2000枚。その葉を1枚1枚成形して葉っぱにしていく。そしてその葉っぱを重ね合わせ枝にして、その枝を重ねて1本の樹にしていった。

「本当は迫力のある老木にしたかったんですがとても無理で、若い樹しか作れませんでした。でも、それだけ“樹”ってすごい存在なんだなって改めて思いましたね」

この作品は筆者も拝見したのだが、樹は本当に樹にしか見えなかった。まさに樹なのだ。そのおかげで龍と猫のフィギュアもグッと引き立っていた。

作品「守珠」は今後、竹内さんの作品展などで展示されることもあると思うので、機会があれば見てほしい。

「守珠」より(写真:@2012 Shinzen Takeuchi)

2012年にはそれまでの活動が認められ、香川県から竹内さんに香川県文化芸術新人賞が贈られた。

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