竹内さんの中で妄想が広がっていく。
樹が成長する過程で、周りに置いてある珠(たま)を樹が取り込んでしまうこともあるだろう。そのうちの1つが宝珠になる。そして、それを龍が取りに来る……そんな作品にしようと思った。
「そんな妄想ができたのは、ほかの仕事を断って時間があったからですね。この作品を作るために3~4つ仕事を断りました。1年間、樹を作ることに費やしました」
樹の模型はほとんど作られていない。ジオラマの一部として、スポンジなどを使ってそれらしく見せている作品はあるが、葉っぱを1枚1枚作っている造形物は見たことがなかった。
まずは何の素材で葉っぱを作ったらいいのか試す。コピー用紙、和紙、粘土などさまざまな素材で葉を制作した結果、トレーシングペーパーで作るとちょうどいい具合になることがわかった。そこまでの試行錯誤だけで半年かかった。
レーザーカッターで切り出した葉っぱは1万2000枚
そして残りの半年で樹を制作した。
5~7mmの葉っぱをレーザーカッターで切り出した。その数、1万2000枚。その葉を1枚1枚成形して葉っぱにしていく。そしてその葉っぱを重ね合わせ枝にして、その枝を重ねて1本の樹にしていった。
「本当は迫力のある老木にしたかったんですがとても無理で、若い樹しか作れませんでした。でも、それだけ“樹”ってすごい存在なんだなって改めて思いましたね」
この作品は筆者も拝見したのだが、樹は本当に樹にしか見えなかった。まさに樹なのだ。そのおかげで龍と猫のフィギュアもグッと引き立っていた。
作品「守珠」は今後、竹内さんの作品展などで展示されることもあると思うので、機会があれば見てほしい。
2012年にはそれまでの活動が認められ、香川県から竹内さんに香川県文化芸術新人賞が贈られた。
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