中学の必須教科は「10倍の速度」で習得可能だ AIタブレット教材「キュビナ」は何が違うのか

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定規やコンパスといったツールもあり、数字入力だけでなく、作図問題にも対応。欄外のメモ、計算の途中過程、スピードなども記録され、AI技術による出題のための解析に利用される (写真:コンパス)

キュビナアカデミーに通う生徒たちは、教室で1人1台のタブレットを使用する。端末への入力はペン型のデバイスで行われ、フリーハンドで文字認識できる。

ユニークなのは定規やコンパスといったツールに至るまで、画面上でアナログに類似したインターフェースで利用できるという点だ。これらにより、計算問題のみならず、生徒がつまずきがちな図形問題へも対応する。

そしてそれらを利用して、生徒が解答するプロセスを記録しながらリアルタイムで解析。同じ不正解でも、単なる計算間違いなのか、そもそも解法が習得できていないのかといったことまで分析し、必要に応じて学習する学年を超えた単元にまでさかのぼって最適な出題を続ける。

学習する生徒側にとっては、不適切な出題に当たる確率が低くなり、効率的に学べるうえにつまずきも少ないため、苦手意識を感じることなく学習ができ、算数や数学嫌いをなくすことができるというのがメリットだ。

必須教科以外の最新技術を学ぶ時間を増やしたい

神野氏がキュビナを開発したもともとの経緯は、子どもたちに"未来を生き抜く力"を培ってもらうためだ。八王子で学習塾を開く前の2010年にシリコンバレーでの起業経験も持つ神野氏が出合ったのは、2045年に迎えるといわれている"シンギュラリティ"の概念だ。

コンパスの創業者でCEOを務める神野元基氏。ポーカーの世界大会で世界19位となった他、大学在学中から起業家として活動し、シリコンバレーでの起業経験も持つなど異色の経歴の持ち主だ (筆者撮影)

日本語では"技術的特異点"とも訳されるこの考えは、つまりはコンピュータが人類の知性を超えること。人工知能の発展により、今以上に多くの職業が人間に取って代わられるとされているが、神野氏はその時代に人間に求められる能力は「圧倒的な能動的思考力」だと考えている。ところが、現代の小中学生たちは塾や習い事などで意外に忙しい。

生き抜くために培っておいたほうが好ましい新しいテクノロジーや技術を学ぶための時間が足りない。そこで、学校で勉強する算数・数学をはじめとする必須科目を効率的に習得するためのツールを考え出したというのがキュビナを開発した神野氏の理屈だ。

キュビナアカデミーは、算数・数学以外に、3DプリンターやVR、ドローンを活用したワークショップやSTEM(科学・テクノロジー・工学・数学)教育講座も不定期で開催している。神野氏によると、これらは将来的に産業の中心となるであろうとされる技術で、いわばこれからの時代を生き抜くための"三種の神器"ともいえるものである。

子どものうちからこうしたものに触れておくことで、生き抜くために必要とされる創造性につながると考えているとのことだ。そこでキュビナが提供する効率的な学習方法によって生み出された時間に、こうしたものを体験するための場も併せて提供されている。

キュビナは現在のところ、小学校1〜6年生と中学1〜3年生向けの算数・数学の教材を用意する。ほかの教科への展開ももちろん予定されているが、最初に算数・数学からスタートされた理由も、こうしたデジタルツールを使いこなすのに必要なプログラミングやモデリングの知識や技術を理解するために必要な基礎学力だからだ。

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