中学の必須教科は「10倍の速度」で習得可能だ AIタブレット教材「キュビナ」は何が違うのか

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キュビナアカデミーのもう1つのユニークな点は、現時点では通学制の学習塾であること。生徒はタブレット端末に向かって勉強をするため、自宅学習でもよさそうなものだが、あえて通学の形式を採用している。そして、教室には教師も在席する。

生徒それぞれの学習進度や理解度などを瞬時に把握しながらアドバイスが行える(写真:コンパス)

しかし、通常の塾との違いは、基本的に先生自身は勉強を教えないこと。勉強を教える"ティーチング"はあくまでキュビナ=人工知能の役割で、先生は"コーチング"のために生徒の傍に寄り添う。その役目は、モチベーションの上げ方や勉強に取り組む姿勢の保ち方を教えることで、いわゆる生徒のメンタル面をサポートするためだ。先生は学校や学習塾の教職経験者を採用しており、必要に応じて学習指導を行うこともあるが、基本はコーチングに専念する。

キュビナには「キュビナマネージャー」と呼ばれる先生用の管理画面も用意されており、生徒それぞれの学習進度や理解度などを瞬時に把握しながらアドバイスが行える。

「算数・数学は積み重ね学習が重要な教科です。一度つまずいてしまうと、理解の遅れを取り戻すのが難しく、さかのぼって個別指導を受けるのが理想ですが、実際にはさまざまな事情でそうした対策が難しい。人工知能の活用でそうした問題も解決できます」(神野氏)

2018年春から通信制を開始予定

キュビナアカデミーでは、子どもに働きかけを行う"コーチング"にこだわる。「子どもたちに接していると、どの子も心の底では勉強をしなければならないということは理解しているように感じます。結局のところ、なぜ勉強しなければならないのかということや、どうやって嫌なことにも取り組めるようにするかという自己調整機能や自己管理能力が学力を大きく左右する要素なのです」と神野氏。さらにそのメンタルをケアする相手については、人工知能に対する最終的な権威として、あくまで人間の役割であることを守るべきだと強調する。

2018年春からは通信教育方式の「Qubena wiz」も開講される予定だ。しかし、従来の教室を構えるスタイルの学習塾は続ける方針。「ユーザーの近くで教材を作ることに意味がある」というのが理由で、通信教育は住んでいる地域や環境により、キュビナアカデミーには通えない子どもをはじめ、より多くの子どもたちにキュビナのメソッドを届けるために用意する。

そのため、自主学習という方式ではなく、自宅に居ながらも曜日と時間を決めて、キュビナによるAIティーチングと、教室の場合と同様に、コーチングのための講師とリアルタイムでチャットができる環境をウェブ上で提供するという。

今後は、コーチングのための保護者向けのツールも提供していく意向だ。現在不定期で開催している、最新テクノロジーを学ぶワークショップに関しても、現在は1人の教師が兼任しているティーチングとコーチングの役割を、算数・数学と同様に人間と人工知能が分業できるような形を整えることで効率化を図り、より多くの機会を提供できるようにしたいという。

神野 恵美 ライター・編集者

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かみの えみ / Emi Kamino

書籍編集者、雑誌編集記者を経て、2004年に海外での2年半の“遊学”を経て帰国。海外在住時からフリーランスとして活動を開始。以降、テクノロジー、文化、ライフスタイル、経営など多ジャンルの出版物や記事の編集・執筆を手掛ける。趣味は「料理」の名を借りた化学実験。学童野球から高校、社会人、プロまで野球の名の付くものすべてを愛する。

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