アマゾン時代に「モノが安くなる」根本理由 中小企業より大手がピンチに
ワイズがライバル企業の10分の1の価格で家庭用インターネット・カメラを発売できたのは、品質を下げたからではない。包装は簡素ではあるものの、ほかの部分では大手ブランドの製品にありそうな機能の多くを備えている。たとえば、強力なセキュリティなどだ(インターネットに接続できる製品にはすべてにある程度のセキュリティ上のリスクが存在するが、ワイズによると、同社の製品や録画されたデータは、暗号を使ってロックされているという)。
ワイズの低価格は低品質からではなく、2つの考え方から生じており、その2つともがアマゾンと関係している。まず、同社の3人の創業者はアマゾンで働いた経験があり、彼らはアマゾンの「大量販売・低マージン」のアプローチに影響を受けてきた。
20ドルの価格を実現するため、ワイズはある中国企業からハードウエアのライセンス提供を受け、ソフトウエアは自社開発した。また同社は、小売業者などの中間業者をいっさい入れなかった。さらには、ワイズは長期間での成功を考えている。最初のカメラではようやく収支トントンだが、創業者らはネット接続できる家庭用機器は成長分野だと見る。彼らは、最初のカメラで信頼されるブランドを築き、その後、低価格で大量販売できる製品を続けて発売することを計画している。
アマゾンでならブランドを築ける
だが、オンライン上でブランドを築くには、どうしたらよいのだろうか。アマゾンが関係してくる2つ目の点はここにある。
ワイズはほかの小売業者には見向きもしなかったものの、アマゾンでの販売は必要だと認識していた。大手メーカーのすぐ横に、短期間で存在感を築くためだ。アマゾンでのランキングやレビューは、消費者が電子機器を買う際に最も重要と言える要素になっている。グーグルなどの検索で、アマゾンのページは上位に表示されるため、アマゾンで好意的な評価を得られればブランドを確立することができる。ただし、否定的な評価だとブランドは崩壊する可能性もある。
「だから、アマゾンで売らなければならない」と、ワイズCEOのユン・チャンは言う。「無視することはできないのだ」。
ワイズ以外にも、オンライン上のブランド構築をアマゾンに頼っている企業が何十社もある。たとえば、電子機器用アクセサリを製造しているアンカー(Anker)、アクション・カメラのイー(Yi)などだ。
さらには、サンバレー(Sunvalley)グループの家電製品ブランド、タオトロニクス(TaoTronics)、VAVAなどがある。サンバレーは中国企業で、同社によると2017年の売上高は3億ドルを超える見込みだが、その約90%がアマゾン経由だという。
以前であればこうした企業は「中国製のコピー商品」を売っているとして、相手にされなかったかもしれない。つまるところ、これらの企業はワイズと同様に、安価な部品と製造業の世界的な効率化を利用して、あまり複雑でない製品の低価格版を製造しているということだ。