「ふるさと納税」がアパレル工場に与えた幸運 寄附金2億円達成の工場に得られるヒント

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今後自治体がふるさと納税に注力していく中で、アパレル工場は各地域のキーとなり得る可能性を秘めています。たとえば山梨県は、ぶどう・桃・さくらんぼ・苺・ブルーベリーなどの果物を収穫できますが、果物には旬の時期があり、畜産物のように一年を通して商品を供給することができません。

山梨・南アルプス市に工場をかまえ、1年前からふるさと納税をスタートさせた『小林メリヤス』は、自治体にとっても貴重な存在。なぜなら『小林メリヤス』のベビー服は南アルプス産のオーガニックコットンを使用しているため、南アルプス市の特色を打ち出せる商品を通年で供給できるからです。

市役所と一体になって戦略を練っているという点では、『UTO』と同じ。ものづくりに理解を持っている担当者とタッグを組み、日々知恵を絞っています 。

ふるさと納税はギフトとしても利用されており、「小さな子どもがいる家庭にプレゼントを贈りたい」という人たちも少なくありません。『小林メリヤス』では、アイテムのカラーバリエーションや種類を増やすことで、選べる楽しさを提供しつつ、複数申し込みたい人たちのニーズに応えています。スタイ(よだれかけ)は汚れやすいため、商品を贈られる側にとっても複数もらえるのは嬉しいもの。こういった双方の心理を読み取りながら、商品構成やラインナップを考えています。

語れるものがあるというアドバンテージ

これまではBtoBでの製造しか手がけてこなかった工場にとって、ふるさと納税はBtoCをスタートさせるこれ以上ない機会です。希望小売価格で販売できるため、利益を生み出せるのはもちろん、エンドユーザーを対象としたビジネスセンスを磨くことにもつながます。

ふるさと納税で成功すれば、そこからの流れで自社ECサイトが生まれたり、セレクトショップとの取引が始まったりすることも考えられる。つまり、新規事業が立ち上がる第一歩にもなり得るのです。

メイドインジャパンの高い品質、そして、その地方にあるその工場だからこそ語れるストーリーがあれば、「地方移住は難しいけど、地方を応援したい気持ちはある」という潜在的な欲求を抱えている人たちに響くはず。最終的に人の心を動かすのはストーリーです。

『小林メリヤス』の商品がギフトとして人気を集めているのも、贈り手が「この商品には南アルプスの雄大な自然で栽培されたオーガニックコットンが使われているんだ」といった語りを添えられるからでしょう。

各自治体の「返礼品の送付競争」は年々激化していますが、前述した『UTO』や『小林メリヤス』のように、ふるさと納税をビジネスチャンスとして捉えている事業者がいることもまた事実です。ふるさと納税は、 長きにわたって地方で積み重ねてきた伝統が強みとなるビジネス領域。語れるものがあるというアドバンテージを、今こそ活かすべきです。

山田 敏夫 ファクトリエ代表

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やまだ としお / Toshio Yamada

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

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