デキる人は「質問するだけならタダ」と考える 「忖度しない」をドイツ人に学ぶ

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日本では阿吽(あうん)の呼吸を求める傾向がまだ根強いので、「これ、やっといて」で済ませてしまうことも多いようです。目的や理由を説明すれば全体像が見え、自然と作業効率が上がります。「丁寧に説明する」ということは生産性に意外と影響するものではないでしょうか。

優先順位を明確にしたコミュニケーション

『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

そうはいっても、部下に急ぎの仕事をなんとか任せたい場面はしょっちゅうあるものです。日本なら「明日の会議までに必要になったから、急いで資料を作ってもらえないか」と頼んだら、部下は渋々であっても、ほかの仕事を後回しにして資料を作ってくれます。

ところが、ドイツで部下に急な仕事を頼んだときには、「Ich habe keine Zeit(私には時間がありません)」と、上司の命令であってもキッパリ拒んできたので、最初は面食らいました。

ドイツ人はアサインメント(仕事の割り当て)がしっかり定められているので、自分の業務の範疇ではないことは基本的に引き受けませんし、すでに決められたアサインメントを優先させます。明日締め切りの仕事であっても、「それはもっと早くに必要になることがわかっていたのに、なぜ今の段階で言い出すのか。それは自分の問題ではない、マネジメントが悪いあなたの問題だ」という考えになるのです。

明日締め切りの仕事であっても最優先させず、すでに抱えている仕事を最優先させる。上司の緊急の依頼よりも、自分の今の業務を優先させる。これはドイツ人独特の優先順位のつけ方かもしれません。だからといって、「日本人には参考にならない」と考えるのはもったいないかもしれません。「ほかの仕事を割り込ませない」という方法は、生産性を上げる最もシンプルな方法でもあります。

そもそもドイツ人は部下から拒まれても、「この部下は使えない」「空気を読めない奴だな」と腹を立てたりしません。そこで好き嫌いの感情を挟まないのが、ドイツ流の生産性にも関係しているように感じます。

相手に腹を立ててしまうと、「もうこの部下に仕事をなるべく任せないようにしよう」などと、一気に非生産的な考えに傾いてしまうことになります。その分、自分で仕事を抱えてしまったら、仕事が増える一方で余計に時間がかかります。

だから、ドイツ人のようにNOと言われたら、「仕方がないな」と即あきらめて、次回は早めに頼むように考えるほうが得策です。

私もドイツ人の部下に拒まれて、初めて「確かに、もっと早い段階で必要になると判断できたな」と気づきました。部下も早い段階で仕事を追加でお願いする分には対処してくれます。

どんなに気をつけていても突発的な仕事は発生しますが、大抵はもっと早い段階で対処できるはずです。それに気づけるのが、生産性を上げる第一歩なのです。

隅田 貫 メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー

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すみた かん / Kan Sumita

1959年、京都生まれ。1982年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、MUFG(旧東京銀行)に入行。3回(計10年以上)にわたるドイツ・フランクフルト勤務を経て、2005年よりドイツ地場老舗プライベートバンクであるメッツラー・グループ(Metzler Asset Management、1674年創業)フランクフルト本社で日系機関投資家を対象とした投資顧問業務を担当。本社唯一の日本人として日独企業風土の本質及びその違いを見る目を養う。20年にわたるドイツ勤務経験を活かし、日独産業協会(NPO)特別顧問として日独経済人の懸け橋として尽力。

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