創業100年「TOTO」が成長し続ける根本理由 TOTO社長「M&Aも、優れた経営者も不要だ」

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TOTOの喜多村円社長は「僕という個人が名経営者である必要はない」と強調する(撮影:今井康一)

それでも今、10年後や20年後の責任を負う意思を持つ。「あの時代の商品はダメだった」と言われないように経営する。そういうトップの思いを代々つないでこられたことが、TOTOのガバナンス(企業統治)の強さです。

――会長や相談役として経営に長く関与する仕組みは作れます。自己承認欲求という観点でいえば、自らの手腕をずっと認められたいと経営者が考えるのは、自然な欲といえます。

あえて欲求というなら、「TOTOは素晴らしい会社だと言われたい」という気持ちがありますね。だけどそのために、僕という個人が名経営者である必要性はありません。せいぜい後の社員から、「喜多村くんの始めたことが、今実っているね」と言われたいぐらいです。

同業買収をやらない理由とは?

――社長が超長期的な視点に立って行動すれば、社員もうまずたゆまず頑張る?

間違いなくそうだと思う。そしてファンを作るというのは本来的に、そういう作業じゃないですか。社員もTOTOファン。もちろんお客さんにもTOTOをずっと好きでいてほしい。こういう社内外のファンを大事にすることは、1代の社長で終わる営みではありません。

うちの商品は毎年買い換えるものではありません。新しい機能が付いたからとか、ブームだからとか、短期的な視点で買われるものでもありません。長年使った後に「次もTOTO」と言ってもらえるかどうか。わが社にとって商品は売って終わりではなく、売ってから後にこそ試されるのです。10年後、20年後まで高い品質とサービスを担保し続けなければなりません。

この考え方が、うちが企業買収をやってこなかったことにも通底しています。

――競合企業と比べると、本当にやりませんね。

「同業を買収して傘下にブランドを増やせば、売り上げと利益が増える」と言う投資家もいます。でも僕はそう言われるたびに、「それは誰のため?誰が喜ぶの?」って聞くんです。お客さんは、年商1兆円の会社だから商品を買う、数百億円だったら買わないって判断しますか? 違いますよね。商品がいいかどうかでしょう。だったらTOTOは、いい商品を作ることを一番大事にしたい。

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