現金不可!スウェーデンの驚くべき決済実情 外でトイレに入るのにも一苦労

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
拡大
縮小

ストックホルムの百貨店の食品売り場、日本でいうデパ地下のトイレのほとんどが無料では使用できない。ヨーロッパ諸国では、コインを入れるとバーが動いて中に入れるシステムや、トイレの入口に老婦人が座っており、チップを支払ってから中へ入るシステムになっている場合もある。

しかし、ストックホルムのデパ地下のトイレの厚い扉には、クレジットカード決済のための機械がついており、1回5クローネ(約90円)と書いてある。「キャッシュレス」であるから、現金の支払い口はない。コインをあらかじめ用意していようが、慌てて両替をしに行こうが、クレジットカードを持っていなければ扉の中へは入れないのだ。別のトイレを探そうとしても結果は同じことだ。この事情を知らないと、トイレに駆け込むだけでもかなりの困難が伴うのだ。

また、レストランでも現金はまず使えない。観光客対策として、レジのところに英語で「現金は使えません。クレジットカードのみです」と書かれているが、日本人の場合、ちょっとした外出ならば、最低限の現金だけ持って、盗難防止のためクレジットカードやパスポートをホテルの貴重品ボックスに入れて出かけることもある。

そのため、レストランでは仕方なくクレジットカードを使ったのだが、決済はサインの代わりに「4桁のピンコードを入れて下さい」と言われる。

「キャッシュは無理」の一点張り

「ピンコードって何? 暗証番号のこと?」

そもそも日本ではATMでおカネをおろす時や、オンライン・ショッピングの場合、ほとんどの場合は暗証番号、またはパスワードで処理しており、「ピンコード」という言葉をあまり使う機会がない。そのため筆者は、異国の地で突然「ピンコードを入れて下さい」と言われたことで混乱してしまい、どの番号を打ち込んだらいいのか、わからなくなってしまった。

結局、何回か数字をインプットしたのだが失敗した。3回間違えて使えなくなり、持って行ったカードがどんどん使えなくなっていった。

「カード決済が通らないから、どうにかキャッシュで払えないですか?」

何度も掛け合ったのだが、先方はずっとこのスタイルで営業しているので、キャッシュ払いは無理ですとの一点張りだ。

途方に暮れていると、店員は突然「よいアイデアを思いついた!」と言い、ここのレストランのオフィシャル・サイトにポイント還元用のお土産があるから、それを飲食代と同じ料金でクレジットカードで購入してくれないかと、真顔で提案してきたのだ。

返事をしないでしばらく黙っていたら、半ば強引にレジのところまで連れて行かれて、レストランのオフィシャル・サイトを一緒に見る羽目になってしまった。

次ページビジネスがうまい国、スウェーデン
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT