ストックホルムの百貨店の食品売り場、日本でいうデパ地下のトイレのほとんどが無料では使用できない。ヨーロッパ諸国では、コインを入れるとバーが動いて中に入れるシステムや、トイレの入口に老婦人が座っており、チップを支払ってから中へ入るシステムになっている場合もある。
しかし、ストックホルムのデパ地下のトイレの厚い扉には、クレジットカード決済のための機械がついており、1回5クローネ(約90円)と書いてある。「キャッシュレス」であるから、現金の支払い口はない。コインをあらかじめ用意していようが、慌てて両替をしに行こうが、クレジットカードを持っていなければ扉の中へは入れないのだ。別のトイレを探そうとしても結果は同じことだ。この事情を知らないと、トイレに駆け込むだけでもかなりの困難が伴うのだ。
また、レストランでも現金はまず使えない。観光客対策として、レジのところに英語で「現金は使えません。クレジットカードのみです」と書かれているが、日本人の場合、ちょっとした外出ならば、最低限の現金だけ持って、盗難防止のためクレジットカードやパスポートをホテルの貴重品ボックスに入れて出かけることもある。
そのため、レストランでは仕方なくクレジットカードを使ったのだが、決済はサインの代わりに「4桁のピンコードを入れて下さい」と言われる。
「キャッシュは無理」の一点張り
「ピンコードって何? 暗証番号のこと?」
そもそも日本ではATMでおカネをおろす時や、オンライン・ショッピングの場合、ほとんどの場合は暗証番号、またはパスワードで処理しており、「ピンコード」という言葉をあまり使う機会がない。そのため筆者は、異国の地で突然「ピンコードを入れて下さい」と言われたことで混乱してしまい、どの番号を打ち込んだらいいのか、わからなくなってしまった。
結局、何回か数字をインプットしたのだが失敗した。3回間違えて使えなくなり、持って行ったカードがどんどん使えなくなっていった。
「カード決済が通らないから、どうにかキャッシュで払えないですか?」
何度も掛け合ったのだが、先方はずっとこのスタイルで営業しているので、キャッシュ払いは無理ですとの一点張りだ。
途方に暮れていると、店員は突然「よいアイデアを思いついた!」と言い、ここのレストランのオフィシャル・サイトにポイント還元用のお土産があるから、それを飲食代と同じ料金でクレジットカードで購入してくれないかと、真顔で提案してきたのだ。
返事をしないでしばらく黙っていたら、半ば強引にレジのところまで連れて行かれて、レストランのオフィシャル・サイトを一緒に見る羽目になってしまった。
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