日本はEV化の超重要な流れをわかっていない 自動車の「EVシフト」はどこから来ているのか

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パッシブハウス性能を持つ集合住宅。延べ床面積1500㎡、計20世帯の集合住宅の熱需要を、わずか700cc程度の中型バイクのエンジンによって賄う。断熱性能が優れた「パッシブハウス」だからできることだ。自動車のEV化も、エネルギーの大きな流れの中でとらえる必要がある(筆者撮影)

はじめまして。建築家の竹内昌義です。私は、横浜にある「みかんぐみ」という建築設計事務所で共同代表をしています。また、山形市の東北芸術工科大学で建築のデザインを教えています。このたび、「エネルギーから考えるこれからの暮らし」というテーマで連載することになりました。どうぞ宜しくお願いします。

私は、大学でエネルギーをあまり必要としないエコハウスなどを設計したきっかけで、エネルギーや林業の話に興味を持ち、多くのエコハウスやエコタウンを設計してきました。日本の国土の67%は森林ですが、あまりうまく活用されていません。でも大きなポテンシャルを秘めています。エネルギーでも、パリ協定の取り組みからの遅れが指摘されていますが、こちらも大きな可能性を秘めています。それらを含めエネルギーや林業、建築の話をしていきたいと思います。

自動車EV化は、自動車業界にとどまるものではない

さて、連載の第1回は、木の話や住宅の話とは一見遠く見えるかもしれませんが、昨2017年に大潮流となった「自動車のEV(電気自動車)化とエネルギーの関係」について考えてみたいと思います。

多くの読者がご存じだと思いますが、イギリスとフランスは「2040年以降、化石燃料を原料とするガソリン車、ディーゼル車の販売を認めない」と宣言しました。例えばスウェーデンに本拠を置くボルボグループなどは、これらを受け「2019年以降に発売するクルマ全てに、電気モーターを搭載する」と発表しています。

一方、日本ではどうでしょうか。自動車関係者がそのことに大きな衝撃を受けているのはもちろんですが、マスコミも含め、「自動車の将来はハイブリッド(HV)なのか、EVなのか、はたまた究極の燃料電池車なのか」などと、それぞれの可能性を議論しているようです。

私に言わせれば、こうした議論は少しずれています。というのも、この自動車EV化の話は、自動車という個別業界にとどまるものではないからです。EV化の話は、もっと大きな「社会全体のエネルギー」という観点から見ると、ごく自然な話です。その意味では、日本は30年遅れてしまったかもしれません。まずは、その点から説明していきましょう。やはり、私たちが注目しなければいけない国はドイツです。

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