中国工業地帯を襲う「天然ガス不足」の深刻度 厳しい環境対策の"副作用"が顕在化

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ガス不足が最も目に見える形で現れているのは、ガソリンスタンドだ。ここでは液化天然ガスで走るタクシーが、数時間待ちの列に並んでいる。

北京から車で南西に2時間の距離にある町、保定のタクシー運転手 Wang Chaoさんは、ガスを入手するため毎日最低3時間は並ぶと言う。 高騰するガス価格と、失われた稼働時間を考慮すると、毎月1000元の収入減を招いているとWangさんは推計する。

保定の地元政府は、コメントの求めに応じなかった。

石家荘市にある町、高邑の住民によると、町の陶器工場の8割が現在閉鎖している。稼働中の大工場も、ガス不足と無縁ではない。

同町で最も大きい工場は、石家荘市がガス危機を宣言した12月初めに生産を半減しなければならなかった。

「この冬、従業員の仕事を維持することは非常に難しい」と、この工場の所有者は匿名を条件にロイターに語った。同工場は毎年5億元程度の売上があり、数百人の従業員を抱えている。

寒い冬

河北省ではこの冬、氷点下をはるかに下回る気温が予想されており、住民はいつもより寒い冬に備えている。

保定郊外の埃っぽい村に住むZhang Xuさん(31)は、寒い寝室で寝ている幼い息子2人が、この冬はいつもより頻繁に体調を崩していると話した。「上の息子はいつも、なぜ家がこんなに寒いのかと聞いてくる。私ができるのは、セーターを着せてやることだけだ」

地元政府が設置したばかりの明るい黄色のガスパイプラインが、Zhangさんの村を縫うように走っている。だが、ほとんどの家には、まだガスボイラーが設置されておらず、昨年残った石炭をこっそり使って暖を取っていると話す住民もいる。

北東部の多くの住宅にガス暖房がない実態を踏まえ、政府の環境保護部は最近方針を転換し、住民に一時的に石炭使用を認めた。

大騒動にもかかわらず、取材に応じた住民や経営者のほとんどは、大気汚染問題対して、何か手を打たなくてはいけないと述べている。ただ、対策の実行方法については、問題があると話した。

「空は青い。けれど、その代償を払っているのは一般の人だ」とZhengさんは言った。

(Meng Meng Elias Glenn 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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