中国工業地帯を襲う「天然ガス不足」の深刻度 厳しい環境対策の"副作用"が顕在化

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天然ガス不足はいまや、中国南部にも波及し始めており、地元政府が警告を出したほか、操業を停止したり生産を遅らせたりする企業も出ている。

「(大気汚染抑制策の)取り組みによって、すでに経済成長に影響が出ている」と、シンガポールのキャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏は語る。「10月の統計は、急激に鈍化した」

石家荘市で台所用品を扱うZheng Wenminさんの店では、今年の売上げが2割減少した。大気汚染の取り締まりによって住宅建設が減速しており、新しい家の内装工事が減ったと語る。

「サプライヤーに支払う額のほうがずっと大きい。工場閉鎖や生産削減によって、供給も不安定だ」と、Zhengさんは話す。

この冬だけでGDP成長率が0.5ポイント鈍化

中央政府の当局者は、大気汚染の取り締まりによって経済にマイナスの影響が出ることはないとしているが、それに賛同しないエコノミストもいる。

中国が大気汚染目標の達成に固執すれば、この冬だけで国内総生産(GDP)成長率が0.5ポイント鈍化しかねないと、キャピタル・エコノミストは推計する。

成長の遅れについて、近く「(中国政府が)心配し始めても驚かない」と、エバンスプリチャード氏は言う。

成長鈍化の兆しはすでに表れている。石家荘市のデータによると、同市の経済は、今年1─9月に7.1%成長を遂げたが、前年同期の7.8%成長から鈍化した。重工業の生産は、今年1─10月は前年同期比で2.4%減少。2016年は4.5%増だった。

石家荘市の政府や省政府、中央政府の環境保護部は、コメントの求めに応じなかった。河北省発展和改革委員会はコメントしなかった。

中国の天然ガスのほとんどは、オフショア又は同国西部で生産されている。北東部の産業地帯での需要増加に対応して、十分なガスを供給するには、パイプライン不足という大きな壁を乗り越えなければならない。また、冬季の利用に向けて夏季にガスを貯蔵する施設も不十分だ。

国営メディアによると、政府はガス不足への対応として、ロシアからガスを運ぶパイプラインの建設を急いでいる。

「今後3─5年に、政府が問題解決できるとは思わない」と、前出のアナリストLiang氏は言う。「今年、河北省政府は20億立方メートル分の供給不足に直面している」

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